高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。
自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。
一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。
今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。
アスリートの方々で症状が重症化してしまう方がいらっしゃいます。
重症化してしまうと本人も痛みでつらいですし、改善するまで数週間から数ヶ月というかなりの時間を要することがほとんどです。
そこで、今回は施術者目線で重症化させないためにはどうしたらいいのか、ということについて詳しく書いていきます。
重症化した症状という定義
ここでいう症状の重症化とは、症状が強くて
- トレーニングの質を著しく落とす
- トレーニングを休む
- ドクターストップがかかる
- 引退を余儀なくされる
といった状況のことを言います。
重症化した症状の発生パターンには、
- 徐々に進行する
- 突然発生する
それぞれについて解説していきます。
徐々に進行するパターン
アスリートであれば日々の厳しいトレーニングをしている中で「少しここが痛い」というのはよくあることと思います。
「これだけ厳しいトレーニングを毎日しているのだから少しくらい痛くなるだろう」と思って放っておいた結果、「ちょっと痛みが強くなってきた。でも少し休めば治るだろう」と判断して少しトレーニングを休んだり質を落とします。
そして、休んで治れば勿論良いのですが、休んで治るという保証はありません。
その時既に重症化の手前まできている可能性もあります。
しかし、数日休んでからトレーニングを再開してみて、まだ痛みが引いていない場合に、「仕方ないからこのままもう少し頑張ろう。次の試合の後、治療を受けに行こう」と多くのアスリートは頑張ってしまいます。
それは、アスリートには目標があり、やる気があり、真面目で頑張り屋が多いからです。
しかし、既にトレーニングを休んだり質を落とす程の状態から痛みを我慢してトレーニングを続けると状態はさらに悪化し、関節や腱に炎症が起きてしまいます。
ここで問題なのは、アスリート自身に「痛みがあっても頑張ってしまう」という真面目なアスリートゆえの落とし穴と、「どれくらいの状態まで我慢していいのか、どれくらい酷くなったら治療を受けるべきなのか」という物差しがないということです。
前者は指導者や保護者、チームメイトが気を配って定期的にアスリートの身体の状態を把握しておくことが理想的です。
特に10代の中高生アスリートはなかなか言い出せずに我慢する傾向があるので、大人が率先してコミュニケーションをとっていく必要性があります。
後者は多くの怪我を経験すればするほどハッキリとした物差しを持つことが出来ます。
しかしそれは結果的にたまたま物差しを持つことができただけで、もし最初の怪我が引退を余儀なくされるほどの怪我だったらその一回の怪我でアスリート人生が絶たれてしまうということもあり得ます。
どれくらいの状態が重症化を防げるリミットなのか誰もわかりません。
初めての症状ほど本人にもわからないのです。
これはガソリンの残量を知らないまま車を走らせているのに等しいです。
早めに給油しておけばガス欠で路頭に迷うことはありません。
ただ、ガソリンの残量が見えないため、そこの判断が非常に難しいのです。
よって、理想としては違和感までなら我慢しても良いと思いますが、それが「痛み」に変わったら迷わず即治療を受けて欲しいです。
突然発症するパターン
重症化している症状で、それまでは自覚症状がほとんどないのに、ある日突然強い痛みが発症するパターンもあります。
突然発症するパターンの多くは関節や腱の炎症です。
上記で「自覚症状がほとんどない」と書きましたが、筋肉的な疲労は感じている場合もあると思います。
しかしアスリートは毎日厳しいトレーニングをしているため、「これくらいの筋肉疲労は普通」と思ってしまう傾向にあります。
それが次の瞬間、鋭く強い痛みとしてやってくるのです。
スポーツでいうと、例えば競泳選手の水泳肩、テニス選手のテニス肘、野球選手の野球肘、ランナーの腸脛靭帯炎などが当てはまります。
こういったスポーツではその部位を含めて身体を酷使していますので、疲労は勿論のこと、多少の違和感程度はアスリートによっては感じているかもしれません。
痛みというのは個人差があるので、それを痛みとして捉えるのか、違和感として捉えるのかは人それぞれです。
しかし重症化して関節や腱が炎症になった時の痛みは確実な痛みで、多くのアスリートはそれまでと同じ強度でのトレーニングを続行するのは非常に困難です。
トレーニングを継続する事が大事
当院に通って下さっている女性アスリートで、日本選手権でも上位にランクインする患者様がいらっしゃいます。
彼女は大学の試験や遠征試合がある週以外は必ず週に一度施術を受けています。
その結果、同じ症状で2週間以上引きずるというのは今のところほとんどありません。
それでも彼女は「今の生活だと時間が取れないけど出来るなら週に二度施術を受けたい」と言います。
その理由として、
- 症状を自覚化する前に施術を受けることで安心してトレーニングに全力投球できる
- 症状がなくても「この動作で力が入りにくい」などの違和感がなくなることでパフォーマンスが改善する
- 疲労回復のスピードが上がるので、翌日からのトレーニングの質が上がる
ということが挙げられます。
彼女は僕と出会う前に腸脛靭帯炎になってしまい、約2ヶ月間トレーニングを休んだり質を落としていました。
症状が治らないまま出場した日本選手権も途中棄権してしまいました。
この怪我は重症だったものの、引退を余儀なくされるほどの深刻な症状ではありませんでした。
結果的にこれを機に「怪我や症状が出るとトレーニングの質が下がる」「施術でもパフォーマンスそのものが上がる」ということに気づき、自分の目標を達成するにはどうすべきかを自分で考え、確実に前に進むようになりました。
その後、特に重症化するような症状もなく、順調に日本ランクを上げていっています。
アスリートとして結果を出すことにおいて何よりも症状を重症化させないということが非常に大事ということです。
セルフケアと治療の二本立て
症状が重症化してしまうと中長期間、トレーニングを休むか質を落とす必要があります。
そうすると目標に到達するのがその分遅れてしまいます。
そのためにはセルフケアを必ず行うことと、定期的に治療を受けることです。
セルフケアはどこまでいってもセルフケアでしかありません。
アスリートの身体への負担というのはセルフケアで全てを賄えるレベルではありませんので、仮に今目立った症状がなくても治療を受けることをおすすめします。
(参考記事リンク)
ストレッチ→https://konno-chiryo.com/stretch-point/
セルフケア→https://konno-chiryo.com/limitations-of-self-care/
症状が重症化してしまってから施術者としてやれることは非常に限られています。
施術としては周囲の筋肉を緩めますが、炎症そのものの痛みとしては残ってしまいます。(※1)
(※1)柔道整復師や鍼灸マッサージ師などの国家資格を有する場合、炎症のある部位に施術をするのは法律として禁忌(禁止)とされています。
高い目標を設定しているアスリートは当然その分厳しいトレーニングを毎日行います。
症状が重症化してしまうと、その努力が水の泡になってしまうと言っても過言ではありません。
トレーニングと同じくらいケアは大事ですので、是非定期的にケアを受けるようにしましょう。
著者プロフィール
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自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、
競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス
など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。
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