アスリートに求められる最高のウォーミングアップ

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

先日、社会人スイマーの方から「レース前のウォーミングアップってどんなことをしたらいいのか」ということを聞かれましたので、今回は適切なレース前に行うウォーミングアップについて詳しく解説していきたいと思います。

ウォーミングアップで求められる事

ウォーミングアップとは、端的に言えば本番に向けての準備ということです。

その準備の内容としては「徐々に身体を暖める」ことが求められます。

人間の身体は急な変化に対応しきれません。
例えば急な温度変化、急な血圧変化、急な血糖値の上昇・下降、全て身体にとっては負担が強い事柄です。

ウォーミングアップ無しでいきなりレース本番になっても身体は動いてくれず、結果は間違いなく散々な結果になります。

徐々に身体を暖めるために、最初は強度の弱い内容から始め、途中で「レース本番以上の強度」を行い、最後にレースと同じ動きをするという流れが理想的です。

必ずレース以上の強度に一度持っていかないとレース本番では力を出し切ることが出来ません。

この際に、アップ完了の指標になるのは実際のタイムや心拍数が一番わかりやすいです。
また、スイマーの場合には腕の回転数も大事な指標です。

ウォーミングアップの内容に関しては、個人種目でも短距離種目や長距離種目でも具体的な内容は異なってきますし、個人種目とチーム種目でも異なるはずです。

しかしながらやるべきことは「レースと同じ動きをする」という目的に向かって、「徐々に身体を暖める」ことと「本番以上の強度を入れる」ことを忘れないようにしてください。

実例:短距離スイマーの場合

具体的なウォーミングアップの実例を挙げます。
これは僕自身が現役当時に行っていた内容なので、短距離の例になります。

  1. ウォーミングアップ 400~600m×1
  2. キック/スイム 200m×1 アップの延長
  3. キック 25m×4~6 約15mを潜水バタフライキックでハード、残りはイージースイム
    バタフライのキックでハードを行う理由は、僕はターン後にバタフライのキックを2~3回打ちますし、飛び込んで浮き上がりまでにバタフライのキックを4~5回打つのでそのために必ずウォーミングアップでも行います。
  4. スピンドリル(ストロークの長さは無視して自分が腕を回せる最速のスピードで回す) 25m×4 約8秒間ほど、残りはイージースイム
    スピンドリルは上記で書いた「レース以上の強度」にあたる内容です。ここでしっかりと神経伝達系を動かさないと次のスプリントで身体が動いてくれません。
  5. スプリント 25m×2~3 壁を蹴って約15mのダッシュ、残りはイージースイム
  6. スプリント 25m×2~3 ターン前5mから浮き上がり3~4かきのダッシュ、残りはイージースイム
    スプリンターとしてはターンでのちょっとしたミスが命取りになりますので、僕は必ずターンを含めたスプリントをウォーミングアップで行うようにしています。水泳選手・コーチはご存知のことと思いますが、飛び込んでスタートダッシュをするレーンでは一方通行のみで、ターンをして壁を蹴ることはNGです。よって、スピードを上げてターンをする機会はここしかありませんのでしっかりやっておきます。
  7. 飛び込んでのスタートダッシュ 25m×2~3 1本はクイックターンして足で壁タッチ、満足すれば約15mほどのダッシュを数回、残りはイージースイム
    スターターが鳴らすスタート音に集中し、レースと同じ気持ちでレースと同じようにスプリントを行います。
  8. ダウン 200m

※ ③以降に適宜25mほどのイージースイムを入れたりもします。

僕はスプリントスイマーということもあり、ウォーミングアップの合計距離は約1400~1600mでした。
時間で言うと30分ほどです。

ディスタンススイマーは合計距離で1800~2400mくらいが多いそうです。
中長距離になるとダッシュ系は上記ほど行わず、50mでのレースペースを1~3本入れることになります。

その時に指標となるのが心拍数です。
普段の練習中のメインセットと同じくらいの心拍数まで一度上げてあげる必要があります。
コーチがプールサイドに来れる会場であればタイムをとってもらうのも重要です。

試合によっては混雑していることもあるので思うように泳げない場合もありますから、距離はあくまでも参考程度にしてください。
(僕自身もそこまできっちりと決めていたわけではありません。)

ウォーミングアップに関しては個人差も非常に大きいので試行錯誤をしてどういったことが自分の身体に合うのかレース結果と合わせて判断する必要があります。

是非、色々と試して最高のウォーミングアップを見つけ、最高のパフォーマンスに繋げてください。

ウォーミングアップでやってはいけないこと

注意すべきやってはいけないこととして

  • 強めのストレッチ
  • 疲れるのを恐れて足りないウォーミングアップ
  • 疲れを感じるほどの多すぎるウォーミングアップが挙げられます。

ストレッチというのは原則「ウォーミングアップ」にはなりません。
それだけでは身体は暖まらないからです。

基本的にはトレーニング後やレース直後(クールダウン直後)に行うべきものと思ってください。

ましてや「痛い」と感じるほど強めにストレッチを行うと力が入りにくい状態になるので注意が必要です。

ストレッチの間違った認識と正しいストレッチを行う上でのポイント
https://konno-chiryo.com/stretch-point/

疲れるのを恐れてウォーミングアップが足りないと身体が思うように動かず、レース本番で力を最大限発揮出来ません。

反対にウォーミングアップが多すぎると疲労の蓄積に繋がるので、レースでも疲れを感じたり後半バテてしまいます。

どの程度ウォーミングアップを行うと足りなかったり疲れてしまうのか、これも個人差があるので本人にしかわからないことです。

少な過ぎても多過ぎてもダメ、ウォーミングアップ以上で疲労未満になるようなベストな距離と内容を見つけるのもまたアスリートに求められる能力になります。

最高のウォーミングアップが最高のパフォーマンスに繋がる

具体的に何が各アスリートにとって最高のウォーミングアップになるのか、それは最終的には本人の感覚に委ねられます。

ただ最低限行うべきこととして、徐々に身体を暖めることと、レース以上の強度を行うこと。このふたつが非常に重要です。

見つけ出すのは簡単ではありませんが、是非試行錯誤をして自分だけの最高のウォーミングアップを見つけ、最高のパフォーマンスに繋げてください。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

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