トレーニングの原理と原則

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

トレーニングには3つの原理と5つの原則があります。

高校生や大学生のアスリート、スポーツ選手、大人になってから趣味で運動を定期的にしている方々の中でこれらを理解しているのは、体育学部に進んだ大学生を除くとあまり多くないのが現実です。
このトレーニングの原理と原則を理解しておくと「なぜ、なんのためにこのトレーニングを行うのか」ということを理解できて、トレーニング効果がその分上がります。
また、オーバートレーニング、オーバーユースからくる怪我の予防にもなります。

パフォーマンスアップを望んでいるアスリート、スポーツ選手ほど理解しておくことをオススメします。

トレーニングの原理と原則について

トレーニングの原理は3つ、原則は5つあります。

原理

  1. 過負荷の原理
  2. 特異性の原理
  3. 可逆性の原理

原則

1. 全面性の原則
2. 個別性の原則
3. 意識性の原則
4. 漸進性の原則
5. 反復性の原則

ひとつひとつ詳しく解説していきましょう。

3つの原理

1. 過負荷の原理

今の身体レベル以上の負荷をかけないとトレーニング効果が出ないということです。
例えばベンチプレスで60kgを10回上げられるとします。
それを毎回のトレーニング時に行っても、筋肉維持は出来たとしても筋肉の増強は望めない、ということです。
よって、筋肉を増強したいのであれば62.5kg、65kg・・・と、一定期間を過ぎたら少しずつウェイトを重くしていく必要があります。

指標となるのは筋肉痛の有無がわかりやすいです。
本来は計算式で回数、セット数、重さ等を出していきますが、それをしなくても

  • 筋肉痛がきていれば充分なトレーニングだった
  • 筋肉痛がきていなければ不充分だった

と言えます。
トレーナーについてもらっていない方は筋肉痛を指標にしましょう。
今の筋肉量に満足しており体型をこれ以上変えたくないという方は今の重さと回数を維持してトレーニングを継続していきましょう。

また、環境として負荷を上げることもできます。
トレーニングでよく聞く方法として古くから高地トレーニングがあります。近年では低酸素ジムも増えてきました。
これは体内に取り込める酸素を環境を変えることで強制的に減らすことで「環境として負荷を上げている」という過負荷の原理を用いたことになります。

2. 特異性の原理

「身体はトレーニングをした内容に対してのみ変化していく」という内容です。
この内訳として、「身体の使い方、テクニックとしての特異性」と「エネルギー供給システムとしての特異性」の2種類があります。

前者は例えば水泳選手がランニングだけをしても泳ぐのは速くなりません。ランナーがスプリントのような短い距離のトレーニングだけをしていたら、フルマラソンは速く走れません。

後者はエネルギー供給システムの話で、レースの時間が短い競技、100m走や50m自由形などは「糖質系」もしくは「糖代謝」と言われるエネルギー供給システムがメインとなります。反対にレースの時間が長い競技、マラソンやトライアスロンなどは「酸素系」もしくは「脂肪代謝」と言われるシステムがメインです。

その競技によってどちらのシステムをより鍛えておくべきなのかというのはレース本番のためにも非常に重要な話です。

3. 可逆性の原理

トレーニングをやめると時間の経過とともに身体能力は低下していきます。筋肉、筋力、筋持久力、体力、心肺機能、世の中には色々な身体能力を表す言葉がありますが、すべて低下していきます。
また、トレーニングをした期間も関係性があります。
短い期間でトレーニングをして仕上げた身体能力はトレーニングをやめると短い期間ですぐに落ちていきます。
反対に長い期間で仕上げた場合は落ちる期間も長く、緩やかに落ちていきます。

5つの原則

続いて原則についてです。

1. 全面性の原則

「身体全体を鍛えた方が良い」という内容です。

例えばアームレスリングは多くの場合右腕同士で組み合うので、右腕から右肩だけを鍛えればそれで良いのかというと、そういうわけではありません。
右腕周囲だけを鍛えて太くした場合は全身のバランスは崩れ、身体が歪み、どこかに負担がかかり、怪我の要因になります。
また、左手でポジション固定のためにハンドルを握りますが、左手から左腕が顕著に弱ければ身体や右腕の動きを支えることが出来ず、勝負に勝つことは難しいでしょう。

アーチェリーや弓道のように、明らかに利き手でのみ動作をするようなスポーツにおいてはある程度それに見合ったトレーニングが必要になってくるのも確かです。
例えば左手は弓を固定する筋力、右手は矢を引く筋力、これらは異なる部位から成り立つ動作です。
よって、体幹部を含めた全身を鍛えつつ、個別でそのスポーツに見合ったトレーニングを加えていくのが理想です。

2. 個別性の原則

「個々人の身体能力、年齢、性別、競技レベルにあわせた個別のトレーニング内容が必要」という内容です。

マラソンのための練習会において例えば「中級者レベル」として参加者を募った場合、フルマラソンのタイムとしてはおおよそ同じだったとしても前半が速く後半落ちてしまうタイプや、前半も後半も同じくらいで走れるタイプもいます。
そうなるとトレーニングすべき事柄が両者では全く異なってきます。

また、フォームにおいては指摘すべきポイントが全員異なると言っても過言ではありません。
動かし方の癖、筋力、競技の経験年数などにより大きく変わってきます。
よって、本来は人それぞれ個人のトレーニングメニューが必要です。

複数人でトレーニングを行うメリットもありますが、人それぞれ伸ばすべきポイント、修正すべきポイントが異なるので練習会でなかなかコーチにそれを聞けないような場合はパーソナルレッスンを入れていく必要性が出てきます。

3. 意識性の原則

「そのトレーニングを頭の中で意識しながら行うとより効果が高まる」という内容です。

例えばウェイトトレーニングにおいても、何も考えずにボーっとしながらベンチプレスを行うのと、鍛えている部位に意識を向けながらベンチプレスを行うのとでは効果が変わってきます。
これはマラソンでも水泳でも、他のどのスポーツにおいても同様です。
トレーニングを行っている時は常にご自身の身体に意識を向けておきましょう。

4. 漸進性の原則

「トレーニングはゆっくり進めていきましょう」という意味です。

いきなり負荷の強いトレーニングを行っても身体はびっくりしてしまい、怪我にも繋がりかねません。
最初はウォーミングアップから始まり、汗をかき始めてから少しずつ負荷をあげていきましょう。

ウェイトトレーニングの重さを上げていくのも、少しずつ段階的に上げていくのが理想です。
ベンチプレスで60kgを上げられたから、次は80kg!というのは無理な話で、怪我に繋がりやすいです。
パーソナルトレーナーについてもらっていない場合は、通っているジムに置いてあるウェイトの最少単位の重さを加えていきましょう。
例えばバーベル用のウェイトで1.25kgがあるなら左右に加えて2.5kg増量ということです。
ダンベルであれば5kgの次に6kgがあるならそれにしましょう。
プロのトレーナーについてもらっていない場合は何よりも「無理をしないで少しずつ」というのがポイントになります。
もしそれで翌日に筋肉痛がこなかった場合はさらに次のウェイトを使ってみてください。

5. 反復性の原則

「定期的に、繰り返して行うことでトレーニング効果がでる」という内容です。

内訳として頻度の話と、テクニックの話が挙げられます。

前者としては不定期に、思い出した時のみトレーニングを行っても効果は出にくいので定期的に決まった頻度でトレーニングを行うと効果が現れます。
目安としてはウェイトトレーニングであれば週に2回行うと効果が出やすいです。
(上半身と下半身を分けて別の日に行いたい場合は合計で週に4回ということです)
週に1回でももちろんやらないより良いです。
それ以下になると効果がないとは言いませんが、目に見える効果にはなりにくいです。

ランニングやスイミング等、あらゆるスポーツのトレーニングとしては週に多ければ多いほど効果が出やすいです。
よって、中学生から大学生、セミプロ、社会人アスリートなどは毎日トレーニングをし、週に1日レスト日を設けています。
趣味で運動をしている大人としては週に1回のトレーニングだとおそらく現状維持がギリギリという方が多いでしょう。
それ以下の頻度になるとトレーニング効果はなかなか望めません。

テクニックに関しては、例えばクロールを泳ぐ際に「キャッチとキックのタイミングはこういうタイミングで打ちましょう」ということをコーチに指摘された場合、それを一度で完璧に修正できるスイマーは多くありません。
多くのスイマーは一定期間それを反復的に練習し、次第にマスターして意識しなくてもできるようになっていきます。
フォームやテクニックで修正したいことがあるなら何度も何度も反復して身体に覚え込ませる必要があるということです。

ベースとなる理論

以上がトレーニングの原理と原則です。
これはトレーニングを行う上で最も基礎となる部分の理論です。
この上に生理学、運動生理学、解剖学、トレーニング理論等の話が存在します。
近年ではスマートウォッチの登場により各自が心拍数やトレーニング強度を把握してそれを元にトレーニングをしているのをよく見かけます。
それも大事な話ではありますが、そういった数値が一体何に基づいて考えられているのかなど、大事な基礎の話も頭に入れてトレーニングを行うようにしましょう。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

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