選手が怪我を回避するために日頃からコーチが行うべき3つの行動

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

当院にはアスリートが多く通院してくださっています。
患者さまの中には症状が重くなるまで施術を受けずに、我慢できなくなってから来院される方もいらっしゃいます。
そのように重症化してしまうと、改善するまでに時間を要しますし、トレーニングは休むか質を落とさなければいけません。

そうならないために、コーチ、監督、指導者、トレーナー(以下、総称して「コーチ」とします)が選手や部員、会員の方々を指導する上で、日頃から行うべき3つの行動をまとめました。

怪我やケアに対する知識の習得

スポーツの現場では、選手や会員さんの症状が出てしまった時に対応する第一手を担っているのは、多くの場合においてコーチとなります。
そのコーチが、症状に対してどういったケアをしていいのか、してはいけないのかを知っておくことはとても大切です。

コーチの主な仕事は選手、会員さんのパフォーマンスを上げることです。
よって、トレーニング理論やフォームについての勉強をしているコーチが多いことでしょう。

その勉強に加えて、怪我やそのスポーツをしていて出やすい症状についての勉強や、解剖学も可能な限り勉強をすることで、怪我の予防に繋がります。

事例:高校生の水泳選手が当院に肩の痛みで来院された

例えば高校生の水泳選手が当院に肩の痛みで来院されました。
練習中に我慢できないほど痛くなったからコーチに伝えたら、練習を中断して痛いほどのストレッチをされたそうです。
翌日、整形外科に行ったら肩関節に炎症が起きていたとのことでした。

この際に、炎症が起きていたら間違いなく痛いほどのストレッチというのはNGです。
もちろん、コーチは整形外科医ではありませんので、その場で「これは炎症がある」という断定はできません。
しかしながら

  • 炎症が起きているかもしれないという考えを持つこと
  • 炎症時によくみられる症状

を頭の中に入れておくことで、「もしかしたら炎症があるかもしれないから、今やるべきことはストレッチではない。必ず整形外科を受診するよう伝えよう」という考えに至る可能性があがります。

日本におけるストレッチの認識

日本においては、「ストレッチはすれば必ず良いもの」「強いストレッチのほうが良い」という認識が強いです。
しかしながらストレッチがいつだって身体にとって良いというわけではありませんし、強ければ良いというわけでもありません。
かえって症状を悪化させることもあるので、知識を深めることでそのリスクを下げられます。

ストレッチに関しては「ストレッチの間違った認識と正しいストレッチを行う上でのポイント」としてまとめてあるので、是非あわせて読んでください。

ストレッチの間違った認識と正しいストレッチを行う上でのポイント
https://konno-chiryo.com/stretch-point/

知識を習得するためには

インターネットの普及により、以前よりも手軽に情報を集められるようになりました。
まずはインターネット上にある情報を拾い集めて一旦知識として取り入れます。
インターネット上の無料の情報が全て正しいかどうかはわかりませんので、気になったことや疑問点について書かれている本を買って、さらに知識を深めていきましょう。
無料が正しくない、有料なら正しい、というようには一概に言えませんが、有料の情報の多くは一定のレベル以上で書かれていることが多く、信頼度が高いです。
また、知識を深めることで怪我を予防しながらトレーニングを行う練習メニューを作れるようになります。

サポートしてくれる施術者をみつける

当院でもトライアスロンチームをサポートしておりますが、部活やスクール、チームをサポートしてくれる施術者、治療院を見つけるのもひとつの手です。

定期的に勉強会を開いてもらったり、施術者から見たスポーツ、怪我予防という点を説明してもらうとかなり知識が深まりますし、選手や会員さんの姿勢も変わったりします。

また、常日頃から施術者と連絡を取り合える環境を作っておくことで、身体・症状について相談にのってもらうこともできます。
トレーニングと施術(ケア)というのはセットなので、そういった環境づくりも大切です。

施術者、治療院選び方

ではどういった施術者、治療院を選べばいいのかという点ですが、まず判断基準のひとつは国家資格保有者なのかどうかという点が挙げられます。

国家資格とは、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、理学療法士などです。
理由としては、国家資格保有者ということは「それだけである程度信頼するに値するほどの知識を勉強して資格を取得している」という点です。
無資格者、民間の資格者でも知識が豊富な施術者はいますが、全員がそうとは言い切れません。
この記事を読んだことをきっかけにいちから施術者を探す場合においては、国家資格保有者というのをひとつの判断基準にしておいたほうがよりベターな選択肢と言えます。

治療院とリラクゼーションの違い

治療院とリラクゼーションは目的が全く異なります。
症状が出てしまった場合は、リラクゼーションではかえって悪化する可能性があるので、絶対に治療院へ行かなくてはなりません。
よって、選手や会員さんに「リラクゼーションには行かずに治療院へ行ってください」と正確に声がけをする必要がありますし、サポートしてもらう院を探す際もリラクゼーションは除外しましょう。

日本においてはリラクゼーション業界の方が治療院業界よりも会社として手広く運営していることが多くて、「大手」「よく聞く会社名」というだけで信頼してしまうところがあります。
それはリラクゼーションとしてはそれで良いのですが、症状が出た場合は違います。症状がある時は必ず治療院を選ぶようにしてください。

治療院とリラクゼーションについて、以下記事に詳細を記載しておりますので、参考にしてください。

アスリートのリラクゼーション店との付き合い方
https://konno-chiryo.com/relaxation/

選手への定期的な呼びかけ

真面目な選手、会員さんほど痛みがあっても我慢して周りには言わなかったりします。
特に選手でスタメンに入れるかどうかが掛かってきたりすると、意図的に隠して痛みを我慢する選手も中にはいます。
相手が呼びかけに応じるかどうかはわからないところですが、練習の最初など、週に1回や月に1回と回数も決めて定期的に呼びかけて症状があるのかないのか確認するようにしましょう。

SNSも活用して発信しよう

定期的な呼びかけに関して、選手と直接話しができるのが、一番良いです。
しかし、人数や環境によっては、一人ひとり全員に声をかけるのが難しい場合もあります。

そんな時には、Facebookグループ、メーリングリスト、ホームページ等を活用して、部活やスクール、チーム全体への発信をするようにしましょう。

また、選手が未成年の場合は保護者もその対象にして、なるべく多くの情報を発信してください。
内容としては以下のようなものがおすすめです。

  • 行っているスポーツで起こりやすい症状
  • 考えられるその原因
  • 間違ったフォーム、症状が出てしまいやすいフォーム
  • 症状が出てしまった時の対応
  • 過去の症例
  • 症状が出てしまったというアナウンス

理想は症状がでないままトレーニングを継続すること

以上がコーチとして注意して欲しいポイントになります。

捻挫や打撲などの外傷を除いた

  • 使いすぎ
  • ケアが足りない
  • 間違った身体の使い方による負担

などが原因の症状というのは、早ければ中学生あたりから出ますので、中学生以上を対象としたコーチは特にこういった視点を取り入れてみてください。

これらの積み重ねがコーチへの信頼度も高まりますし、選手や会員さんの満足度も高まり、選手、部活やチームの質も高まることに繋がります。

理想を理想論で終わらせず、症状が出ないよう工夫をしながら選手や会員さんを鍛えていってください。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

関連記事

  1. 恐ろしい病、糖尿病を防ぐために必要な運動習慣・食事習慣

  2. 胃の負担とその症状、セルフケアについて

  3. セルフケアの限界と治療院で治療を受ける意味

  4. アスリートも気をつけるべき痛風の原因と対策

  5. ランナーを悩ますシンスプリントの原因と対策、セルフケア

  6. 水泳肩(水泳での肩の痛み)の原因と年代別の未然の対策