高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。
自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。
一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。
今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。
先日足首の痛みで来院された患者さま(ランナー)より、「今後はテーピングを使ってトレーニングをしてもいいのか?その方がいいのか?」と聞かれました。
このご質問に対する答えは、半分はイエスであり、半分はノーです。
今回はその理由について詳しく解説していきますので、今すでにテーピングを使っている方は是非読んで頂き、それらのメリットとデメリットを理解しておきましょう。
※この患者さまは50代男性、趣味でランニングとスイミング、10kmが40分強という走力です。
目次
練習におけるテーピング
目的と役割
運動中の痛みに対して運動中も貼った状態で使うテーピングの役目は、「筋肉の代わり」です。
例えば上記の患者さまのケースでは、主に長短腓骨筋(ふくらはぎの外側)に負担が集まっていて筋肉が硬く、腓骨筋が腱になる部位あたりの足首に痛みが生じていました。
この状態に対して、ランニング中に腓骨筋を補うようなテーピングをすると腓骨筋の負担は減り、症状は出にくくなります。
この目的においてテーピングというのは非常に有効的なアイテムです。
デメリット
一方で、今後ずっとこのテーピングをしながらランニングを続けていくと、本来であれば筋肉に入る刺激をテーピングが吸収してしまうことで、腓骨筋への刺激が減ります。
刺激が減るということは、長期的に見るとその筋肉が徐々に減ってしまうことにも繋がります。
減ってしまうと同じ負荷のトレーニングをテーピング無しで行った場合にあっという間に痛みが生じることになりかねません。
つまり極端な言い方をすれば「テーピングなしではもうトレーニングができない可能性」に繋がりかねないということです。
理想的なテーピングの使用方法
痛みがある、痛みがすぐに出てしまう、出やすい状態のときはテーピングで補ってあげて、症状が出にくい状態でトレーニングをしましょう。
その期間がどれくらいかかるかは人それぞれですが、テーピングは「期間限定で使うのが望ましい」ということです。
加えて、腓骨筋に負担が集まっているなら、
- 施術を受けて腓骨筋の硬さを改善してもらう
- 腓骨筋を筋トレで鍛える、走り方を修正する
ということを行い、将来的には同じ症状が出ない身体作りをして、テーピングからは卒業していきましょう。
試合におけるテーピング
目的と役割
上記でテーピングは筋肉の代わりと書きましたが、その目的は負担の軽減目的だけではありません。
実はパフォーマンス向上のために動きを良くする、より滑らかにする、動きやすくする、という役目もあります。
このように怪我とは無関係にパフォーマンス向上のために使うプロアスリートもいるので、テレビで見ているだけではどちらの目的のために使っているのかわからないのが現実です。
特にプロアスリート、プロチームにはトレーナーが所属していることがほとんどですので、今のコンディション以上のパフォーマンスを発揮させるためにテーピングの効果を借りるプロアスリートやプロチームは多いです。
パフォーマンス向上以外には、以下のような怪我に関連する用途でもテーピングを貼るのが得策といえます。
- 少し前に怪我をしてしまい、テーピング無しだとまだ少し痛む
- 昔怪我をして筋肉が落ちたから試合の動きに耐えられるか不安
- 本当はこの動きづくりや筋トレをしてパフォーマンス向上を求めているけど、まだ足りていない
デメリット
しかし、テーピングを貼って試合に臨むのが普通になってしまうと、徐々に根本的な改善をさせる姿勢を失ってしまい、いつの間にかテーピングに頼り過ぎてしまうというケースもあります。
理想的なテーピングの使用方法
あくまでもテーピングというのは期間限定というのを改めて認識しましょう。
動きづくりや筋トレによる肉体改造というのは時間がかかるもので、避けて通ることはできません。
そのため、しっかりとご自身の課題に向き合い、時間がかかってでも根本的な解決をする努力をしてテーピングに頼らない身体を求めていきましょう。
急な痛みに対するテーピング
目的と役割
レースや試合前日に突然予期せぬ痛みを覚えた方もいらっしゃるかと思います。
その状況下でも施術を受けられるならその方がベターですが、既に遠征先にいたり、治療院が週末で休みだったり、多くの場合では残念ながら施術を受けられないことも多いでしょう。
その際には、テーピングを貼ることで、
- 筋肉への負荷の軽減
- 痛みの軽減
を行い、本来のパフォーマンスを発揮できないかもしれませんが、痛みを”少しでも抑えて”試合に臨むことも可能です。
※痛みが強い場合は途中棄権や辞退する勇気を持つことも大事です
デメリット
デメリットとしてテーピングを貼った状態で動くことに不快感を覚える方もいらっしゃいます。
テーピングを行う上での注意事項
コーチやトレーナー、チームメイトに貼ってもらえるかを確認しましょう。
お願いできる相手がいない場合は自分でテーピングをするのもありです。
以前からあるキネシオのテーピングは基本的には関節をまたいで貼ることが多く、自分で貼り付けるのが困難な場合も多いです。
ただ足首から膝辺りなのであれば自分で貼れますので、緊急対応としてやり方を覚えておくのも良いでしょう。
最近は穴の空いた湿布大のテーピングも徐々に認知が広まってきており、そのタイプだと「痛む部位に貼るだけ」なので、手軽です。
アスリートであれば念のため、少なくともどちらかのタイプのテーピングを手元に置いておくことをおすすめします。
また、トレーナーはテーピングを貼るのも仕事のうちなので大丈夫ですが、コーチやチームメイトがしっかりとテーピングを貼れるかどうかは個人差があります。
テーピングを貼ったけど痛みがそんなに引かないケースもあるかもしれませんので、その場合も途中棄権や辞退を考えましょう。
急な痛みに対する、理想のアプローチ
急に出た痛みが今回始めての部位なら仕方ないのかもしれませんが、普段からのケアが足りていないから痛みが出てしまうということなので、定期的に治療院へ通うようにしましょう。
初めてではない場合は根本的な解決をしていく必要があります。
例えば上記の患者さまの足首の痛みは主に腓骨筋だという話をしました。
では腓骨筋だけをテーピングで補っておけば解決するのかというと、そういうわけではありません。
なぜなら、腓骨筋に負荷が集まってしまった理由のひとつに同じ筋膜に属する筋肉の硬さが隠れている場合が往々にしてあるからです。
例えばこの患者さまの場合は、スパイラルラインという筋膜に属する大腿筋膜張筋(骨盤)と大腿二頭筋(裏もも)の硬さがあったからです。
仮に腓骨筋だけをテーピングしてランニングを継続した場合、大腿筋膜張筋の負荷により鼠径部が痛くなったり、大腿二頭筋の負荷により膝が痛くなることも起こり得ます。
よって、この患者さまのケースでいうと
- トレーニング強度を下げたくないなら期間限定でテーピングを使うのも良い
- 施術を受けて腓骨筋、大腿筋膜張筋、大腿二頭筋を始めとする負担が溜まっている硬い筋肉をケアする
- 腓骨筋が弱いので鍛える
- 身体の外側の筋肉に負荷が集まっていて、実際内転筋群の筋力を確認しても弱いので、内転筋群も鍛える
というのが理想です。
デメリットもしっかりと理解して使いこなしていこう
いかがだったでしょうか。
テーピングには使うことで筋肉が減る可能性もあるというデメリットがあることを知っていた方は良いのですが、知らなかった方はまずはそれを頭に入れた上で、今後どうしていくべきなのかを施術者としっかり話し合っていきましょう。
そしてご自身がプロアスリートではないのであれば、理想はテーピングは期間限定、頼り過ぎない、卒業する、というのを目指してトレーニング、身体作りをしていきましょう。
著者プロフィール
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自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、
競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス
など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。
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