クロールのプル時に手首が曲がる原因とその改善方法

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

最近では流水プールを手軽な価格で利用できたり、撮影を許可してくれるプール、水中カメラの精度や機能が充実していることで自分の泳ぎの水中動作を動画に撮って研究したり、動画を観ながらコーチに指導を受けたりしているスイマー、マスターズスイマー、トライアスリートが多いかと思います。

当院でも患者さまから動画を観てフォームを教えて欲しいというご要望を施術の後に受けることが多いです。

その際に、「大人から始めたトライアスリート」が陥りやすい共通した癖として、キャッチからプルにかけて「手首を曲げてしまう」という点があります。

今回はキャッチからプルにかけて「手首を曲げてしまう」原因と改善方法について詳しく書いていきます。

キャッチからプルにかけて「手首を曲げてしまう」原因

理由として大きいのは、水をとらえてかくために意識すべき部位を間違えていることです。

本来水をとらえてかくために意識すべき部位は、「手のひらから肘にかけて」です。
しかしながら、患者さまとお話していると手首を曲げてかいてしまう方の意識は「手のひらだけ」という方が圧倒的に多いことがわかりました。

手のひらだけで水をかくのと、手のひらから肘にかけてで水をかくのでは使っている面積が変わってきます。

後者のほうが明らかに面積が広いです。
ひとかきでより沢山推進力を得るためにも、使っている面積は広いに越したことはありません。
手のひらに意識がいくということは手のひら側に力を過剰に入れすぎてしまうことにもなります。
手のひら側に力が入るということは、手首を曲げる筋肉が反応します。
それが「水をかく」という動作と相まって、手首を曲げる動作に繋がってしまいます。

「水をとらえるのは手のひらだ」という間違った認識と「水をかきたい!」という強い気持ちが重なることで手首を曲げて泳いでしまうのです。

キャッチからプルにかけて「手首を曲げてしまう」癖を放置するデメリット

この手首が曲がってしまう癖を放置したままトレーニングを続けた場合のデメリットは3つあります。

デメリット1:肘の故障

ひとつ目は肘の故障です。
前腕部の筋肉を過剰に使ってキャッチからプルをしているので、筋肉が硬くなりやすく、肘への負担が増すことで起こります。
ちょっとした肘周りの腱の痛みなら1~2回の施術で改善しますが、それが炎症までいくと非常に治りは悪くなります。

デメリット2:推進力が低いまま泳ぎ続ける

ふたつ目は推進力が低いまま泳ぎ続けることです。
修正することで、推進力の向上、タイムの向上に繋がります。
放置するとそれを放棄することになってしまいますので、是非癖を直しましょう。

デメリット3:キャッチ後の動作で肘から引いてしまうプルになりやすい

みっつ目はキャッチ後の動作で肘から引いてしまうプルになりやすいことです。
解剖学的に手首を曲げた状態でプルをしようとすると、背中をあまり使えていないことも相まって肘から引いてしまいます。
そうすると推進力としては相当落ちてしまいます。

改善策

改善するためには、意識とトレーニングの両方が必要となります。
そこで、以下の3つをトレーニングの中に取り入れてみてください。

改善策1:意識すべきは肘まで

キャッチからプルで水をとらえてかく為に意識すべきなのは、手のひらだけではなく、手首から肘にかけての「前腕」も必要です。

僕がよく患者さまにお伝えするのは、手首を無視して指先から肘までを1つの「オール(※)」のようにしてください、ということです。
その意識ひとつで手首を曲げにくくなります。
※オール:手漕ぎボートで使うオール

ただ「手首を曲げない!」という意識が強すぎると今度は無駄な力みにも繋がりかねませんので、あくまでも必要最低限の力の入れ具合というのが求められます。

これは言葉で理解するのは簡単ですが、なかなか身につかない方もいらっしゃいます。
そこでパドルを使えるプールで泳いでいる方には以下のようにパドルを使う練習を取り入れてもらうようにしています。

写真のようにパドルを持って泳ぐことで物理的にパドルに邪魔されて手首を曲げにくく、尚且つ肘までの部位で水をかくという意識に繋がりやすいです。

改善策2:テコの原理で考える

頭の中で「こんな感じで動こう」とイメージをしながら練習をするのもとても大事です。
手首を曲げずに泳ぐために必要なのは、テコの原理をイメージすることです。
テコの原理とは作用点、支点、力点から成ります。代表例で言えばシーソーがそれにあたります。

手首を曲げてしまう場合

手首を曲げてしまう場合は以下の写真のように

  • 手のひら=作用点
  • 手首=支点
  • 前腕=力点

といえます。

理想の形

では理想はどうなのか。
指先から肘まで(オール)が作用点、肩関節が支点肩、肩甲骨、背中の筋肉が力点となります。

指先から肘まで(オール)を動かすために最も意識すべき筋肉は肩、肩甲骨、背中の筋肉といえます。
勿論他にも筋肉は作用します。

上腕部や胸部の筋肉も作用しますが、「一番はどこか?」と聞かれたら肩甲骨から背中にかけてです。
これは幼少時から競泳をやっていた人なら誰しもがそう答えます。

改善策3:陸上でのドリル

水中動作を助けるためにも、陸上でのドリルはとても大事であり、効果的です。
まず初級編のドリルをふたつ挙げます。

以下のトレーニングは全部キャッチからプルにかけての動作において、背中や肩甲骨まわりを意識して、それらの筋肉を使って水をかくための練習です。
筋力トレーニングではなく、「使いたい筋肉を使うためのドリル」です。
何度も反復して身体を動かす感覚を養っていきましょう。

ドリル①

用意するもの

女性は1~2kg、男性は3~5kg程度のダンベルを用意してください。
女性はペットボトルで代用して頂いても構いません。
あまり軽いとわかりにくく、重すぎると肩を痛めかねないので程よい重さにご自身で調節してください。

手順
  1. 仰向けで寝て、右手でダンベルを持ってください。
    手のひらが天井に向いた状態にします。
  2. 左手を右の胸部全体を触れるような位置に置きます。
  3. 胸部を意識して(胸部の筋肉を使って)肘を伸ばしたまま右手を天井方向へ挙げていきます。
    うまく胸部を意識していれば胸部の筋肉が収縮して硬くなるのがわかります。
  4. 次に、今行った胸部への意識を「一切しないで」腕を同じように挙げていきます。
    正しく行えている場合は胸部の筋肉の収縮を先程よりも弱い状態で腕を挙げられます。
    その分、実は背中の筋肉を使って腕を挙げていることになります。
    身体に敏感な方は背中の筋収縮を感じ取れるかもしれません。それで正解です。
    背中の筋収縮を感じられない人は繰り返し練習して感じられるように頑張りましょう。

ドリル②

  1. 写真のように壁、できれば角のそばに立ち、左手を壁に置きます。
  2. 前方に上半身を倒して壁にもたれ掛かるようにしてください。

    写真で示す左の背中、肩甲骨らへんがストレッチされていると正解です。
    その状態から左腕を前方に軽く押します。
    ストレッチされていた部分に力がグッと入っている感覚がわかれば、正解です。

修正部位以外にも目を向ける必要性

「手首を曲げないで泳ぐ」ということに対して単純に「手首を曲げないように気をつけよう」と意識をして修正できる方は良いのですが、多くの方はそう簡単にはいきません。

そもそもの意識すべき部位が間違っているので、そこの認識を修正するためにも腕全体の動かし方、肩まわりの使い方から修正すべきポイントになります。
幼少時から水泳をやってきた人以外は、こういった意識すべき部位や動かし方は経験してこないまま大人になっています。
その場合は使えるようになるまでに反復練習が必要となりますので、何度も何度も地道に練習をしていきましょう。

練習をしていけば使えるようになりますし、正しく動けると驚くほど泳力が増します。是非頑張っていきましょう。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

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