手術痕に対する鍼の効果

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

手術が必要なほどの骨折や腱の断裂、病気を治す際の手術(腹腔鏡での手術を含む)や帝王切開による出産など、それを縫った痕はどうしても皮膚や皮下組織が突っ張ってしまい、それにより痕そのものに痛みや違和感が残ったり、違う部分に悪影響が出たりします。

その部分がどうなっているのか、またそれに対する鍼治療の効果を詳しく解説していきたいと思います。

手術痕について

手術痕は皮膚が分厚くなっていたり、ケロイド状になったり、皮膚の弾力性が無くなることでつっぱるような感じがします。

皮下組織としてはメスが入ったことで組織が癒着を起こすことが多いです。皮膚の下にしこりのようなものを感じる方はそれが癒着です。
癒着は切開後に無理やり組織をくっつけたことで生じます。

手術が終了し、手術痕は時間の経過と共に腫れぼったい感じや皮膚の色が変わっていき落ち着くと思いますが、数年経っても完全にもとの皮膚に戻ることは残念ながらあり得ません。

手術痕の主な自覚症状としては以下が挙げられます。

  • 手術痕の痛み、痒み
  • 皮膚が引き攣れて痛む、違和感がある

それ以外に非常に厄介な症状でいうと

  • 一見全く関係のない部位の痛み

というのがあります。

自覚症状に対する注意点

各自覚症状に対する注意点を詳しく書いていきます。

手術痕の痛み、痒み

手術痕は組織が硬くなっていますので、その分弾力性が落ちます。

弾力性が落ちると何かがぶつかった時は衝撃を吸収できないので、痛みを強く感じます。
また、手術痕がさらなる傷を負う可能性もありますので、注意が必要です。

傷を負ってしまうと感染症のことも気にしなければなりません。

痒みに関しては、傷跡が治っていく過程としてどうしても痒くなります。
擦り傷や切り傷が治っていく時に痒くなるのと同じです。

この時に掻いてしまうと、これも傷跡になるかもしれず、感染症に繋がってしまいます。
できるだけ我慢して掻かないか、病院へ行って軟膏クリームを処方してもらうようにしましょう。

皮膚が引き攣れて痛む、違和感がある

皮膚を縫い合わせていることで本来の皮膚の柔軟性は失われてしまいます。

例えば体重が増加すると本来は皮膚も伸びていきますが、手術痕だけは伸びてくれません。
よって、その部分だけ痛くなることもあるようです。

手術痕が大きければ大きいほどそうなる可能性が高いので、手術当時の体重から大きく増加してしまうようなことはないよう努力することが必要です。

一見全く関係のない部位の痛み

身体のどこかに自覚症状として痛みがあるものの、この痛みの原因が手術痕にあるというのは自覚していない方がほとんどだと思います。

そうすると患者様ご自身としても痛みの原因として手術痕の可能性があるという考えがないので、施術者にその旨を伝えることがなく、いつまでもなかなか改善しきらないことに繋がってしまいます。

これが上記で書いた「厄介」という理由です。

縫うときは若干引き寄せて縫うそうですので、その「引き寄せた分」というのはどこかが「引き寄せられた分」です。

そのどこかが引っ張られ続けることで痛みとして発生します。
特に多いのは腹部に手術痕があり、腰部に痛みが発生するケースです。

手術痕に対する鍼治療の効果

鍼治療では皮膚や皮下組織に鍼をすることで、組織を柔らかくし、それによって起こっていた様々な症状を改善していきます。

当院で鍼治療をした例を挙げます。

20歳代、トライアスリート。肩甲骨骨折後の可動域制限が主訴。

バイク中に落車事故を起こしてしまい、肩甲骨を骨折してしまいました。

切開してボルトを入れて骨を固定する手術を行った結果、その後何年経っても肩の可動域制限が解除されず、左右差も大きく、肩に痛みがあるという相談でした。

肩周囲の筋肉を緩めつつ、手術痕の周りに鍼治療を行うことで癒着が改善され、痛みと可動域制限も改善されました。

手術痕への鍼治療は一度だけで症状は改善しました。

30歳代、女性。帝王切開の痕が原因の腰痛。

最初から手術痕が原因だと考えていたわけではなく、最初は腰痛に対して筋肉的なアプローチをし、症状は徐々に改善していきました。

あと2~3割の痛みがなかなか取れないことで初めて手術痕が原因なのかどうかを疑いました。

手術痕に対しての鍼治療をすることで痛みがゼロとなりました。

お話を聞くと手術痕が若干痒いということで、腰痛がなくなった後も手術痕への鍼治療は継続しました。

月に1~2度の鍼治療を半年ほど続けた頃に痒みが気にならなくなったとのことで終了しました。

女性の中には男性の施術者に対してこういったことを打ち明けづらい患者様もいらっしゃることと思いますが、手術痕が原因で別の部位が痛くなることはあり得ますので出来るだけ施術者に伝えることをおすすめ致します。

改善する可能性を諦めないこと

手術痕による症状というのは、致命的なものが多くありません。

ちょっとした痛みや痒み、違和感でとどまってくれる方も多いようです。

中には我慢できないほどの症状になってしまう方もいらっしゃいますが、なかなか病院側はそこまでの治療というのは行わないのが現実のようです。

そういった時は鍼治療で改善する可能性が充分にありますので、悩む前に一度鍼灸院へ行って相談してみてください。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

関連記事

  1. 患者も把握しておくべき鍼治療による気胸のリスク

  2. 施術者からみた定期的にケアを受けて欲しい理由

  3. アスリートにおける鍼灸治療の効果

  4. アスリートのリラクゼーション店との付き合い方

  5. 鍼灸に関するQ&A

  6. アスリートにとっての整形外科、整骨院、接骨院、治療院の使い分…