アスリートにおける鍼灸治療の効果

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

トップアスリートで鍼灸治療を取り入れている方々は多くいらっしゃいますし、最近では大学の部活動でも鍼灸師とトレーナー契約をして体のケアをお願いしていると聞きます。

では具体的にアスリートにとって鍼灸治療がどう効果的なのかを掘り下げていきましょう。

アスリートにおける「筋肉」のケア

アスリートは毎日のように筋肉を酷使しています。

ケアは毎日の練習・トレーニングと同じくらい重要なものです。

その日の疲れはその日のうちに対処し、翌日は全回復した状態でまた練習に取り組むのが理想です。

そして、疲労や筋肉の硬さで練習の質が落ちてしまうようなことは避けなくてはいけません。

練習で酷使した筋肉を回復させるには食事として摂る栄養、睡眠による休養、そしてトレーナーが行うケアが挙げられます。

トレーナーが行うケアの中には、

  • マッサージやストレッチ
  • 鍼灸治療

がありますが、個人的に「目的とする筋肉を回復させたい」と思ったら鍼灸治療が一番効果が高いと感じています。

なぜなら、筋肉は何層もの構造になっており、深い場所の筋肉が硬くなっていたらマッサージでどうにかしようと思っても届きません。

また、無理やり届かせようとすれば受け手としては非常に痛みを伴うことと思います。

その結果、表層の筋肉はダメージを追って翌日揉み返しになってしまう可能性もあります。

痛みを伴うマッサージのデメリットに関しては、以下記事にまとめてありますのでご参照ください。
https://konno-chiryo.com/tsuyoimassage/

そのため、目的とする筋肉を回復させたい場合には鍼で直接届かせるのが一番有効になります。

また、マッサージというのは外からの外力で血流を良くして回復を促す「間接的」な刺激です。

それに対して鍼は筋繊維に直接的な刺激を与えて微細な傷をつけることで人間の自然治癒力がその傷を治そうと血流をそこに集めます。

血流が良くなった結果、その周囲の疲労物質も流してくれますので筋肉がより回復します。
この効果・作用は鍼を抜いた後およそ24時間ほどは続くと言われてます。

このように、深い筋肉にも届き、直接的な刺激を入れられるという2つの理由で鍼治療は効果が高いと考えられます。

アスリートにおける「内臓」と「メンタル」のケア

アスリートの負担は筋肉ばかりと思いがちですが、内臓にも負担は及んでいます。

また、レース、試合、大会により緊張したり日々練習で追い込むことでメンタル面でも疲労していることがあります。

なぜ運動することで内臓の負担が増すのか?

内臓への血流量の低下

安静時には内臓に流れている血流は全体の約40%と言われてます。

それに対し、運動時には血流が筋肉にもっていかれますので約5%まで低下すると言われてます。

この5%で最低限の内臓の活動を維持しなければなりません。

運動時の内臓の揺れ

運動時に体が動くことで内臓は揺らされ、それも内臓への負担に繋がります。
(頭を強く振って、いい気持ちはしないのと同じです。)

身体の水分量

運動時は汗で体内の水分が出てしまいますので、水分補給が充分でなかった場合は血流が悪くなり、その分内臓への負担も大きくなります。

日常生活での負荷

運動終了後に食事を摂ることで内臓は働き始め、睡眠時も必死に回復させようと働き続けてます。

それが毎日ですので、内臓疲労は必ず生まれ、積み重なっていきます。

精神的な負担が内臓への負担につながる

本番というものは大なり小なり緊張した状態で挑むと思います。
これは、アスリートなら誰もが経験のあることと思います。

緊張は本番が終わってもスーッと鎮まってくれない場合もあります。
また、本番でミスをし、それをいつまでも考えてしまうことも精神的な負担となっています。

そして、そのような「緊張状態が続く」「精神的な負担が生じる」といったことが内臓の負担につながっていきます。

  • チームメイトの失敗で負け、それに対して怒りを覚えている場合は肝臓の負担に。
  • 自分のミスを思い悩んでいる場合は脾臓に。

など、東洋医学的では感情と臓器には密接な関係性があると考えます。

「内臓」と「メンタル」への鍼灸の有効性

運動時の内臓への負担、緊張からくる興奮状態、それが続けば自律神経の乱れ、さらに精神状態もまた内臓への負担として現れます。
加えて、日常生活や食生活や元々の体質により、ご自身のどの臓器にどの程度負担が掛かっているかは変わって来ます。

このように、皆様異なる内臓の状況に対して鍼灸では、脈や複数のツボを押し、痛みのある反応点からどの内臓を中心に治療をすべきか割り出していきます。
つまり患者様の体のどの内臓により負担がきているのかということを鍼灸師が触ればわかるので、的確に治療をすることができます。

鍼灸治療におけるデメリット

薬には副作用が少なからずありますが、鍼灸治療には副作用がないことが大きなメリットです。

強いてデメリットを挙げるなら鍼を刺される感覚とそれが翌日にも残ってしまう可能性・体質の方もいるといったことが挙げられます。

鍼治療の刺激量は鍼の太さと刺す深さによって調節できます。

刺激大 刺激小
太さ 太い 細い
深さ 深い 浅い

「皮膚だけに浅く刺して筋肉に到達していないなら効果ないのではないか?」と疑問に持つかもしれませんが、人間の体は非常に繊細にできていて、わずか数ミリ刺しただけで感知してくれます。

例えば、指にトゲが刺さっていれば気付かない人はいないのではないでしょうか?

同じように数ミリ鍼が刺さると体が感知し、体内に異物が侵入してきたとして血流をそこに集めて異物を排出しようと反応します。

この効果により周囲の筋肉にも血流が増していきます。

しかし、臀部の筋肉は厚く、加えて何層にもなっているので数ミリだけの刺激では不充分な場合が多くあります。

また、細い鍼は深く刺せば曲がっていくことがエコーを使った実験で証明されており、それは周囲の筋肉が硬ければ硬いほど曲がりやすくなります。

そのため、症状の重さや部位次第ではある程度の太さである程度の深さまで刺す必要があり、その結果鍼特有の感覚に襲われることもあります。

また、体質によっては鍼に刺された感覚が翌日まで続いてることもあり、練習中にも「痛さ・違和感」として感じるという方もいらっしゃいます。

これが鍼治療のデメリットになります。
僕は個人的に鍼を刺さなくても治るならその方が良いと思ってますが、鍼治療じゃなきゃ治らないと判断した時は鍼治療をします。

アマチュアアスリートにも鍼灸はおすすめ

ここまで、プロアスリートの方に合わせて、お話をさせて頂きましたが、アマチュアアスリートにも鍼灸治療はおすすめです。

アマチュアアスリートの場合には、

大学生なら授業、勉強、バイトにも時間が割かれます。
社会人なら、大部分を仕事に費やします。

その上で練習を行うため、どうしても体のケアに費やす時間は最後に回されがちです。

体は本来「自然治癒力」を持っているので、ちょっと運動したくらいなら自然とある程度は回復していきます。
また、それと同時に、体は自然と順応もしていってくれるので「今のその体が自然体」だと思い込む可能性もあります。

しかし、多くのアマチュアアスリートは

  • 確かに運動はしているが、そこまでの負荷は掛けてない
  • プロでもないし、定期的に治療院に行くほどでもない。

と考えていらっしゃいます。

そしてなにより、「痛みがあるわけでは無いから大丈夫。」「少し痛みがあっても、このぐらい大丈夫」と考えてしまいます。

しかし、痛みというのは、

  1. 運動
  2. 回復しきらない
  3. どこかが硬くなる
  4. 体が順応する
  5. 運動
  6. 回復しきらない
  7. 他のどこかが硬くなる・さらに硬くなる

を繰り返し、ある日突然痛みとして出てきます。

この痛みは体からのSOSサイン、絶対に治療が必要となります。

そして、このような痛みや、疲れが残っている状況で、本業の仕事や学業において、ベストパフォーマンスを発揮できるでしょうか?

しかし、冒頭でもお話したように、アマチュアアスリートの場合にはメンテナンスのために使える時間に制限があります。

そのため、少しでも効率よく疲労を抜き、回復を促す事ができる、鍼灸がおすすめです。

プロであれアマであれ、アスリートを続けていく限りは体への負担が続くので、ケアをしない、つまりはどこの治療院にも定期的に通わないというのはさけましょう。

将来的には腱断裂や肉離れのような大きな怪我に繋がってしまいます。

施術を受けるおすすめの頻度

施術を受ける頻度はこれもプロアスリートと同様で人それぞれではありますが、痛みがあるうちは週に1度程度通って早く痛みがない体にもっていくことをおすすめします。

痛みがない、もしくは軽い痛みなのであれば2~3週間に1度でいいと思います。

ケアは練習と同じくらい大事。人によっては鍼は練習と同じくらい大事

スポーツの種類や練習の頻度、アスリートのレベルや年齢、アスリート自身によるセルフケアの頻度と質によって勿論変わってきますが、トップアスリートで毎日のように練習しているならケアの頻度は少なくとも週に2回。週に1回なら鍼治療じゃなきゃケアが追いつかないことが多いように感じます。

また、鍼がそんなに好きではないアスリートに聞いてみると「この症状が治るなら多少の鍼の感覚なんて余裕」という方が多いです。

アスリートにとっては体のケアは練習と同じくらい大事なものですから、真剣なアスリートほど真剣にケアに取り組んでいるよう感じ、1度の施術の効果としてより高いものを求めています。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

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