高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。
自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。
一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。
今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。
鍼を刺す際に、深く刺していくと場所によっては肺に到達し、肺に穴を開けてしまうと気胸となります。
気胸には程度があり、軽症であれば安静にしていると自然と治っていきます。
しかし、重症だと死に至る可能性もあります。
鍼治療により気胸になってしまった場合、基本的に全責任は施術者にあります。
しかし、鍼灸院に通院されている方としても、少しでもリスクを下げるために持っておいた方がいい予備知識となります。
目次
気胸について
気胸にも、以下のような種類があります。
- 自然気胸:
特に10~30代の細身、背の高い男性、その中でも喫煙者に多く見られる傾向、特に原因があるわけでもなく自然と発生してしまう病 - 外傷性気胸:
交通事故等で折れた肋骨などが肺に刺さることで穴が空いてしまう状態 - 月経随伴性気胸:
女性が生理の前後で、子宮内膜症との兼ね合いもあり発症する - 医原性気胸:
医療行為や医療従事者、特に鍼灸師による鍼治療により、誤って肺に鍼を刺してしまう事故による気胸
症状としては胸の痛み、息苦しさ、空咳、胸からコポコポと音がする、などがあります。
重症例では肺がしぼんで心臓を圧迫してしまい、心停止に繋がることもあります。
治療は、軽症であれば安静に、重症であれば手術が必要です。
重症だと痛みとしては激痛というレベルですし、安静にしていても息苦しさがあります。その場合はすぐに救急車を呼びましょう。
鍼治療による気胸の実例
調査期間が1987年2月〜1993年10月と少々古いデータとなりますが、
「胸郭周囲部に施鍼を行った者として749名、そのうち気胸と報告されたのが4名で、0.53%」
という調査データあります。
※胸郭周囲部:胸から背中にかけて
※施鍼:鍼治療を行った、という意味
引用元:鍼治療により発生した気胸
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/44/3/44_3_233/_pdf/-char/ja
このパーセンテージが多いのか少ないのかではなく、本来鍼治療によって気胸は起こしてはいけないものなので、4名の方に実際に気胸が起きてしまったということが問題です。
前述した通り、鍼治療により気胸になってしまった場合、基本的に全責任は施術者にあります。
しかし、鍼治療にはこういったリスクがあることを、施術者は勿論のこと、患者さまとしても頭の片隅に入れておくべきだと個人的には考えます。
気胸にならないために患者さまが出来ること
皮膚から肺までの距離というのは、筋肉量などによって異なるので個人差がありますが、短い(浅い)と2cmくらいだと言われています。
そのため、普段から浅めに鍼を刺す鍼灸師はそんなにリスクが高いとは言えないでしょう。
浅めというのは大体0.5~1cmほどで、特徴としては筋肉への「ズン」という響きが少ないことが挙げられます(ゼロではありません)。
普段から深めに刺す鍼灸師はその分リスクも高いと言えるので、深めに刺す鍼灸師に鍼治療をお願いしている患者さまは首、肩、胸、背中、脇の下に鍼を刺してもらう時に「ここは気胸のリスクはありますか?」と確認してみるのも1つの対策です。
患者さまから気胸についての言葉があることで、施術者としても改めて注意することが出来ます。
もし、初めていく鍼灸院など関係性ができておらず、気胸のことに触れにくい場合には、「深めに刺すとつらいので(もしくは痛みが残りやすいので)、浅めに刺してください」と正直に伝えるようにしましょう。
また、施術を受けている時に少しでも嫌な感じがしたら、勇気を出して施術を中断してもらうようにしましょう。
事故は起きてからでは遅いので、「リスクに対して確認する」「違和感を感じたら言う」といったことを行い、患者さまとしても事故を未然に防げるようにしましょう。
もし、「聞けない」「言えない」場合には、その鍼灸師とはまだそこまでの信頼関係がないのかもしれません。
その場合、もっと信頼できる鍼灸師を他に探してみるというのも大事なことです。
当院での対策
当院としては以下の4つを必ず行うようにし、患者様の状況を細かに把握し、リスクを極力下げております。
対策1:気胸のリスクがある部位へは短い鍼を使う
これは物理的に短い鍼を使うことで、誤って深く刺すことからくる気胸のリスクを抑えることが出来ます。
具体的には3cmの長さの鍼を使用し、鍼の上1cmと持ち手を持って鍼を操作することで実際の鍼の長さを2cmに出来ます。
これは現実的には目分量になってしまいますし、2cmでも胸部の筋肉が薄いところに刺せば気胸のリスクがゼロとはいえません。
ただ元々長い鍼を使用するよりもリスクを下げられるのも確かです。
対策2:雀啄(ジャクタク)をしない
雀啄とは鍼灸の専門用語で、鍼を刺した後に鍼を上下に動かすことで刺激量を増やす手法です。
これを行うと鍼を上下に動かしているので、知らず知らず最初の深さよりもさらに深く刺している可能性があります。
よって、気胸のリスクがある部位への雀啄は行いません。
対策3:電気鍼は使わない
電気鍼、もしくはパルスとも言いますが、鍼に電極を繋いで電気を流して筋肉を強制的に動かしてあげて血流を良くする手法です。
仮に鍼が深く、あと少しで胸膜だという位置に鍼がある時、電気鍼にして鍼周辺を動かすと、その振動と筋肉の緩みでその鍼が動いて胸膜へ達する可能性はゼロではないと考えています。
そういった理由から電気鍼も行いません。
対策4:細かな声掛け
気胸に限った事ではありませんが、鍼をする時はなるべく細かく声がけをするようにしています。
「痛くないですか?大丈夫ですか?」と声をかけることで、患者さまが無理して我慢しているということがないように注意するよう心がけております。
自分で出来る努力はしておこう
気胸になると軽症でも数日間安静にしなくてはいけませんし、手術が必要な重症になると退院まで約1週間、その後数週間かけてトレーニングができる状態まで回復させていく必要があり、トレーニングスケジュールの変更やレース、試合などはキャンセルしなくてはいけない可能性もあります。
病院の治療費などは鍼灸院が入っている保険で支払われますが、ご自身が得た痛みや治療・リハビリに費やした時間は戻ってきません。
そうならないように、最低限の鍼治療のリスクを理解し、自分の身は自分で守るために自分なりの対策を用意したり、信頼できる鍼灸師を見つけるようにしましょう。
著者プロフィール
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自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、
競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス
など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。
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