高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。
自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。
一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。
今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。
これから徐々に暖かくなり、夏に入ります。
例年、熱中症という言葉がニュースに出てきますし、「水分摂取と共に塩分摂取も」というアナウンスを聞くことも普通になったことと思います。
しかし、「汗を流したら塩分摂取を」ということだけ切り取って理解している方も多いようなので、そこで今回は塩分摂取の全体像をしっかりと理解する為に詳しく解説していきます。
但し、高血圧のために減塩指導を受けている場合は主治医にご相談し、医学的なアドバイスを受けるようにしましょう。
なお、この記事は管理栄養士の監修の元書いております。
目次
日本人は塩分を摂りすぎている〜人の身体における塩分の基礎知識
体内の塩分濃度は0.9%(0.8%~1.1%の幅で増減している)と決まっています。
それを維持する為には、1日に1.5g以上の塩分(ナトリウム;Na)を摂取しないといけないと言われています。
また、1日の塩分の目標摂取量は、男性が7.5g、女性は6.5gです。
(これ以上の摂取は高血圧になりやすくなってしまいます。)
参考サイト:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000760248.pdf
そのため、
- 男性:1.5〜7.5g/日
- 女性:1.5〜6.5g/日
が理想とされています。
ですが、実際の日本人の平均的な塩分摂取量(2019年)は男性が10.9g、女性が9.3gと厚生労働省から公表されています。
平均的な日本人であれば国が定めている目標摂取量を大幅に超えて摂取しているのが事実です。
塩分の摂りすぎは高血圧に繋がり、高血圧は心臓や血管に負担がかかるので脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全などの病気に繋がってしまいます。
日本では高血圧の患者数は4000万人を超えているといわれていますので、実に3人に1人という数字です。
日本人は塩分を摂りすぎなこと、塩分過多が高血圧に繋がること、高血圧は様々な病気に繋がるということ、まずはこれをしっかりと理解しましょう。
塩分の摂取方法〜食塩以外からの摂取
塩分という言葉を使っていましたが、塩分というのは食塩だけではありません。
食塩以外でも、
- 醤油やめんつゆ、カレールーや味噌などの調味料
- ハム、ソーセージ、ベーコン、いくら、たらこなどの食材
にも多く塩分は含まれています。
調味料に含まれる塩分
醤油やめんつゆ、カレールーや味噌など、あらゆる調味料に含まれています。
詳細はこちらのサイトを参考にしてみてください。
http://home.c06.itscom.net/maruko/08foods/enbun/enbunhayawakari.html
1日の正確な塩分摂取量を一般人が計ることは難しいので、ご自身が日本人の目標摂取量である7.5gより多いのか少ないのかはわからないことと思います。
最低でも1日に1.5gの塩分を摂れば0.9%の体内塩分濃度を維持できるわけですから、今の塩分摂取量、つまりは味の濃さをもっと薄くしたとしても、普通に食事をしていれば問題なく1.5gはクリアできます。
よって、血圧に心配のない方でも今より味付けを薄くすることをおすすめします。
血圧が心配な方はかなり頑張らないとなかなか血圧は下がってくれません。
例えばお寿司の醤油の量は半分、ラーメンや麺類の汁は飲まない、味噌汁が好きなら減塩の味噌汁にする、などです。
食材に含まれる塩分
一部の食材や商品にはかなりの塩分が含まれています。
代表的な食材としてはハム、ソーセージ、ベーコン、いくら、たらこなどです。
例えばベーコン2枚で約1gの塩分が含まれています。
また、商品としてはカップ麺の類にも多くの塩分が含まれています。
こちらは平均すると5gほど含まれていますので、スープを含めた一杯を食べただけで1日の目標摂取量の半分以上になってしまいます。
よく購入する成分表を見て「食塩相当量」を確認しましょう。
成分としてはリン酸ナトリウムや亜硝酸ナトリウムが入っていると、それだけで塩分が高い商品なので注意が必要です。
トレーニングによって失われる塩分量
運動内容と強度によりますが、1時間の運動で失われる汗は大体1リットルで、その中に含まれる塩分量は4~5gといわれています。
ただしこれはあくまでも平均的な数字なので、個人差があることに注意してください。
体内の塩分を失うとミネラルバランスが崩れ、足が攣りやすくなったり、熱中症になったり、低ナトリウム血症のような重篤な症状が出てきたりします。
よって、失われた塩分を補うことが必要になってきます。
ここで注意しなければいけないことは、上記の「1時間で1リットルの汗、その中に4~5gの塩分」というのをそのまま「同等量を補わなければいけない」というように理解する必要はない、ということです。
なぜなら冒頭で記載した通り、そもそも日本人は塩分を充分すぎるほど摂取しているので、体内にはある程度の塩分が残っています。
必要最低限だけ補給できればいいので、トレーニング中は水分補給をメインに考えましょう。
水分補給に関しては、以下を注意してください。
- 夏のトレーニング中の水分補給では真水ではなく、スポーツドリンクを選ぶ
- 成分表を見て「食塩相当量」の数字を確認し、0.1~0.2gの商品を選ぶ
詳しくは「夏場の運動時における水分補給のポイントと注意点」を参考にしてください。
夏場の運動時における水分補給のポイントと注意点
https://konno-chiryo.com/hydration/
アスリートにおける塩分を摂りすぎたこと、足りなすぎたことで現れる症状
塩分を摂りすぎたこと、足りなすぎたことで以下のような症状が現れる場合もあります。
むくみ
塩分の摂りすぎはむくみに繋がります。
これは体内の濃くなってしまった塩分濃度を下げるために水分が必要なため、余分な水分を溜め込んでいる状態ということです。
塩分の摂りすぎによるむくみであれば、その後の塩分摂取量に気をつければ一過性なのでそこまで心配することではありません。
ただ余分な水分の分だけ体重が増加していますので、その状態でトレーニングを積めばいつもより疲労感が増し、その分トレーニングの質が下がるということです。
レース日であれば、身体が重い分パフォーマンスの低下にも繋がってしまいます。
高い目標を掲げているアスリートほど一回のトレーニングを大事にすべきですので、日頃から塩分摂取量は気をつけるようにしましょう。
また、毎日体重を計測している場合、数字だけを追いかけるとむくみの分だけ太ったのかと勘違いしてしまいます。
体重だけではなく日々の運動量や食生活も含めたトータルで自分の状態を把握するように心がけましょう。
腰痛
塩分を摂りすぎると血圧が高くなります。
腎臓は血液をろ過する役割を担っていますが、血圧が高くなればなるほどろ過する際に腎臓への負担が高まります。
腎臓への負担が高まると、隣り合っている大腰筋にも負担がかかり、大腰筋の筋緊張を作り上げてしまうといわれています。
大腰筋に筋緊張が起きて硬くなると拮抗筋である脊柱起立筋も硬くなります。
硬くなった腰に運動や日常生活で負担がかかれば痛くなることもあります。
腰痛の原因というのは多岐に渡ります。
筋肉由来なのか、内臓由来なのか、両方なのか。
仮に内臓由来であれば、筋肉的なアプローチばかりしても改善にはなかなか結びつきませんので、そこを見極めなければなりません。
低ナトリウム血症
マラソンやトライアスロンのような中長距離スポーツをしている場合に水分補給として真水を選ぶと、大量の汗によって失ったミネラル、特にナトリウムが補給されないままとなります。
体内の塩分濃度が低いまま水だけを補給すると余計に体内のミネラルは薄まりますので、それが低ナトリウム血症という病気に繋がってしまいます。
低ナトリウム血症は適切な処置をしないと最終的には死に至る病ですので、真夏に中長距離スポーツをしている方は注意しましょう。
症状としては段階があります。
最初に疲労感がありますが、これはトレーニングをしていれば誰でも疲労感を感じるものなので、この時点ではおそらく「運動からくる疲労だ」と判断してしまうのも無理はありません。
症状が進むと頭痛や嘔吐、さらに進むと痙攣(けいれん)が起き始めます。
頭痛や嘔吐の時点でトレーニングを即中止し、スポーツドリンクを飲んで涼しい場所に移動して安静にしましょう。
痙攣が起きてしまったら周りの人が即座に救急車を手配してください。
トレーニング中の水分補給、日常の生活では適切な塩分補給を
まず何より大事なのは、1日の合計塩分摂取量を考えると、日本人は摂りすぎということです。
そのため、今よりも薄い味付けに慣れるよう頑張りましょう。
確かに、トレーニングによる汗や真夏にかく汗で確かに体内の塩分を失います。
しかし、食事でも充分に摂っていることを考えると、失った分と同等を直ちに補給しなければいけないというわけではありません。
そのため、トレーニング時や真夏の外出時で大量の汗をかく時だけは水分補給としてスポーツドリンクを選び、基本的には塩分というのは摂り過ぎに注意をしましょう。
著者プロフィール
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自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、
競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス
など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。
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