クエン酸には疲労回復効果はない?

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

僕が現役の時、疲労回復にはクエン酸が有効であることからオレンジジュースやレモン、梅干しなどを摂るよう言われていました。

アスリートの皆様も疲れたときにクエン酸を、という考えは今も頭の中にあるのではないでしょうか。

しかしながら、最近では実はクエン酸に疲労を回復させるような効果はないと言われてます。

本当のところはどうなのか、今言われていることをまとめていきます。(2020年11月11日時点)

尚、この記事は管理栄養士の監修の元書いております。

クエン酸が疲労回復に効果があると言われていた理由と実際の効果

クエン酸は基本的には酸っぱい食材に入っています。
特にレモンには多く入っています。

ラグビーやサッカーの試合にはちみつ漬けにしたレモンを食べる(なめる)シーンを見たことがある人も多いと思います。

様々なスポーツでクエン酸の摂取が取り入れられていた理由には、

  • クエン酸が変化していく過程でATPという身体を動かすエネルギーが作られる
  • クエン酸が運動して疲れた部位に溜まった乳酸を除去してくれる

と”言われていた”ことが挙げられます。

しかし、現在の研究では上記2つの効果は無いとされています。

そこで、上記2つの取り入れられていた理由の詳細と、現在の研究内容をなるべく簡単に解説します。

クエン酸が変化していく過程でATPという身体を動かすエネルギーが作られる

クエン酸は以下の様な形で体内で生成され、使われていきます。

  1. タンパク質、炭水化物、脂質という食べたものが消化、代謝されてピルビン酸という物質に変化していく。
  2. ピルビン酸がクエン酸回路というエネルギーを作るための回路に進むとクエン酸という物質に変わる。
  3. クエン酸が変化していく過程でATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーが作られる。
  4. このATPという物質を元に身体は動かすことが出来る。

以上の回路を踏まえ、「この回路の物質であるクエン酸を摂れば、この回路がより活性化されてエネルギーも多く作られるのではないか?」という考えでした。

しかしながらクエン酸という物質は食べ物として外から体内に入れなければいけない物質ではなく、体内でも合成が可能な物質です。
それ故、体内で足りなくなることがありません。

また、過剰に摂ったからと言ってクエン酸回路が活性化するというのは安易な考えです。

車で言えば、エンジンの大きさから排気量が決まり、つまり車のパワー、速度が決まってきます。

エンジンを大きくすれば排気量も上がり、速度も速まるかもしれませんが、クエン酸の摂取量を増やすということは新しくクエン酸回路を増やすというわけではありません。
クエン酸の摂取量を増やしたからと言って、エンジンを大きくするわけではないということです。

そして、体内に必要な分以上のクエン酸を摂取した場合は体内で処理できず余ってしまいます。
余った分は使われずに体外へ排出されます。

クエン酸が運動して疲れた部位に溜まった乳酸を除去してくれる

以前は、以下ように考えている人がほとんどでした。

  1. 運動して疲れるとその部位に乳酸が溜まる。
  2. それが翌日の筋肉痛にさせている。
  3. クエン酸はその乳酸を除去してくれるので、摂るようにする。

しかし最近の研究では運動直後に乳酸の濃度はピークですが時間の経過とともに濃度は減っていき、最終的には約1時間後には消えていくことがわかっています(※1)。

つまり、「乳酸が溜まるから疲労として感じるし、筋肉痛にも繋がる」というのは間違いと言えます。

※1 参考サイト
http://www.waseda.jp/sports/supoka/research/sotsuron2006/1K03A802-0.pdf

よって、クエン酸が乳酸を除去すると言われていましたが、そもそも乳酸は疲労を長期間感じさせている物質ではないのでクエン酸が疲労回復に繋がるとは言えないのです。

クエン酸の本当の効果

ここまでクエン酸は疲労回復に効果はない旨を書いてきましたが、クエン酸に効果が全くないというわけではありません。

ひとつは酸っぱさを感じることで爽快感に繋がり、それが精神的な疲労回復に繋がります。

もうひとつは鉄分の吸収力が上がることです。

アスリート、特にランが多い(長い)マラソンランナーやトライアスリート、ボクサーなどは貧血になりやすいので、鉄分の吸収力が上がることはプラスなことです。

まずは基礎を徹底すること

以上がクエン酸についてです。

これらは今の時点でわかっていることであり、まだまだ人間の身体や栄養についてはわからないこと、研究が進んでいないことも多いので、今後も正しい情報で知識をアップデートしていくことが理想的と言えます。

疲労の要因に対して「たった一つこれだけすればOK」みたいなものは僕は個人的にはあまり信頼を寄せていません。

トレーニング後の疲労回復には基礎的なことである糖質、アミノ酸、ビタミンB群をいち早く摂ることを徹底する。

これが基礎中の基礎です。
まずはこの基礎を守っていきましょう。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

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