高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。
自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。
一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。
今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。
当院にはランナーやトライアスリートの患者さまが多く来院されます。
症状は様々ではあるものの、膝の痛みというのは比較的多くみられます。
その中でも鵞足炎(ガソクエン)という、膝の下の内側に痛みが走る症状に悩まされる方もいらっしゃいます。
ランナーやトライアスリートは膝を含めた下半身を酷使するスポーツです。
また、バスケットやサッカーなど陸上を走る動作が含まれているスポーツをしている方の中で過去膝を痛めたことがある方は勿論、今はまだ膝に違和感や痛みがない方もこの記事を読んで鵞足炎について理解し、予防していきましょう。
目次
鵞足炎とは
場所
鵞足とは膝の内側、膝関節からおよそ5cmほど下方に位置しています。
ちょっと出っ張った骨があり、その名称になります。
鵞足に付着する筋肉は3つあります。
- 縫工筋
- 薄筋
- 半腱様筋
これらの筋肉が硬い状態でランニング動作を継続していくと負担が積み重なり、付着部の腱に炎症が起きてしまいます。
付着部には滑液包(カツエキホウ)があり、骨と筋肉を結ぶ腱の滑走を助ける働きがあります。
運動からくる度重なる摩擦によりこの滑液包が炎症してしまうと発症します。
※滑液包は全関節に存在しており、ゼリー状の小さな袋で主にクッションや腱の動きを滑らかにするの役割を担います。
症状
症状としてはその部分がピンポイントで痛くなり、ほとんどの人は走れないほどの痛みになります。
階段の上り下りや膝の曲げ伸ばしだけでも痛みが出てしまいます。
そのポイントを押すと痛むこともありますし、腫れている場合、触ると熱感がある(触ると熱さがある)場合もあります。
重症化すると何もしてなくても痛かったり、歩くことさえままならないこともあります。
なりやすいスポーツ
マラソンやトライアスロン、サッカー、バスケなど、陸上におけるランニング動作があるスポーツは全般そのリスクがあります。
水泳においては平泳ぎを専攻しているスイマーにもリスクがあります。
痛みにより目的とするスピードで走れない等の症状がある場合、普段通っている治療院か整形外科に早めに行きましょう。
鵞足炎の原因
鵞足炎の原因に関しては、以下の7つが多く見られます。
①オーバーユース
運動のし過ぎにより関節への負担が強まり、炎症までいってしまいます。
②セルフケア不足
普段からストレッチやセルフマッサージなどのセルフケアをせず、日々の疲労を溜めこんでいってしまうと炎症に繋がりやすくなります。
③柔軟性不足
下半身を含めた全体の柔軟性を失っていくと付着部の摩擦も増えて腱の負担が増加し、炎症に繋がりやすくなります。
④ケア不足
ある一定以上の頻度や質でトレーニングをしている方はセルフケアだけでは身体のケアというのはまかない切れません。
よって、治療院へ定期的に施術を受けに行くことが大事です。
僕が個人的に実感しているトレーニング時間と通院頻度に関する記事も書いてありますので、そちらもあわせて読んでください。
「治療院での施術頻度の目安」
https://konno-chiryo.com/treatment-frequency/
⑤アーチの低下(崩れ)
足底のアーチが低下してしまうとそれだけで下腿(膝から足首)が内側に捻られ、膝が内側に入ってしまい、上記3つの筋肉(縫工筋、薄筋、半腱様筋)が引っ張られてしまいます。
引っ張られた状態でトレーニングをすれば腱や付着部が必要以上に引き伸ばされますので、その分負担が増し、炎症に繋がりやすくなります。
⑥臀筋の硬さ
大臀筋や外旋六筋と呼ばれる梨状筋、上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋というのが下肢(足)を外旋(外側に撚る)させる作用があります。
それら筋肉を酷使して硬くなった場合に下肢が外旋すると、鵞足部が引っ張られることになります。
その状態でトレーニングを継続すると鵞足部の負担が強まり炎症に繋がりやすくなります。
⑦ウォーミングアップ不足
身体が充分に暖まっていない状態で運動強度を上げると腱や付着部への負担が増すことになります。
一度や二度でいきなり炎症にまでなることは可能性として低いものの、普段からアップ不足の方は負担がチリツモで積み重なっていき、炎症に繋がる可能性がその分大きくなります。
鵞足炎の治療と改善
治療としては僕は以下6つを確認し原因となっている筋肉や部位を特定していきます。
- 下肢(足全体)を内旋させる筋肉
- 下肢を外旋させる筋肉
- 下腿(膝から下)を内旋させる筋肉
- 下腿を外旋させる筋肉
- それら筋肉が属している筋膜に存在している他の筋肉
- アーチ
施術をしていると原因となっている筋肉はひとつではないことがほとんどです。
よく「鵞足炎には縫工筋」というサムネイルや記事を見かけますが、必ずしも縫工筋だけが原因となっているわけではありません。
縫工筋はさほど硬くないケースも少ないですが存在します。
薄筋のほうがよっぽど縫工筋よりも硬くなっているケースもあります。
原因は人それぞれ異なりますので、アプローチすべき筋肉も異なってくることを覚えておきましょう。
各筋肉が原因の場合
硬い筋肉を確認しそれらをゆるめていきます。
また、それら筋肉と同じ筋膜に属している筋肉も確認し、硬ければゆるめていきます。
例えば半腱様筋と腓腹筋(ふくらはぎ)や脊柱起立筋(首から腰)は同じ筋膜に属しています。
よって、腓腹筋や脊柱起立筋が硬ければその分その筋膜は柔軟性を失っており、仮に半腱様筋を充分にゆるめられたとしても症状の改善度合いとして甘かったり、症状が改善したと思ってもすぐにぶり返してしまうことに繋がります。
アーチが原因の場合
アーチは原因の項で述べた通り、アーチが潰れてしまっている場合は元に戻す必要があります。
マッサージや鍼でも改善できますし、神経系統がうまく機能していない場合もあるので、トレーニングをして回復させてあげるとアーチが戻りやすくなります。
炎症に対しての治療は禁忌
治療として、炎症に対しては基本的に何もできません。
炎症部位への施術というのは禁忌になっています。
よって炎症は抗炎症作用のある湿布等で対応しつつ、炎症を作り上げてしまった硬い筋肉に対して施術を行います。
※「治療」というのは施術者が行う行為(施術)のことであり、湿布やアイシングは自分でも行えるセルフケアの一環となります。
施術する頻度
施術する頻度としては炎症・痛みの度合い、トレーニングを継続するかどうかにもよりますが、症状が落ち着くまでは1週間に1度程度の施術を受けることが好ましいです。
その上で症状の度合いやトレーニングの有無、その必要性、患者さま本人の意思からテーピングをするのか、しないのかを総合的に判断します。
自分で行える対策
鵞足炎になってしまった場合、専門家に治療をお願いすることに加え、以下のようなセルフケアを行うことで、
- 練習時の痛みの軽減
- 改善のサポート
しかし、あくまでも「軽減」や「サポート」をするだけですので、1度は専門家に見てもらうことをおすすめします。
①ストレッチは一旦やめる
鵞足炎に限らず、症状が炎症までいっている場合はストレッチというのはすべきではありません。
なぜなら炎症部位である滑液包、腱が炎症しているのに無理に引っ張る(ストレッチする)とかえって痛みが増す可能性があるからです。
これは足首の捻挫をイメージして頂ければわかりやすいかと思います。
足首を捻挫して歩くことさえ痛いときに足首のストレッチをする人はいないのではないでしょうか。
明らかにストレッチをして痛くなることが想像できます。
上記の原因②や③で出てくるストレッチや柔軟性の低さとはあくまでも症状が出ないための予防であり、炎症の症状が出てしまってからはやるべきではありません。
②テーピング
鵞足炎になってしまったら軽症の場合、テーピングをしてトレーニングを継続することは可能といえば可能です。
出来ることなら膝を使わないトレーニングのみに切り替えたり、プールでの水中歩行、水中ジョグが望ましいです。
今トレーニングレベルを著しく落とせない場合はトレーナーやコーチ、施術者と相談しつつ、テーピングをしてある程度のトレーニングを継続しましょう。
最初数回はトレーナーや施術者に貼ってもらい、慣れてきたら自分でも貼れるはずです。
重症までいってしまい、安静にしていても痛い、歩くのも痛いという場合はテーピングをしてのトレーニングは好ましくないです。
おそらくテーピングをしても痛みを覚えるでしょうし、その状態で無理してトレーニングを継続すると治りがさらに遅くなります。
③アイシング
炎症にはアイシングが効果的です。
患部に20分間アイシングをし、最低60分間空けてから20分のアイシング、というのを時間の許す限り繰り返します。
アイシングに関しても記事を書いてますので、あまり詳しくない方はそちらもあわせて読んでください。
「アイシングの正しい方法とNGな方法」
https://konno-chiryo.com/icing-point/
④マイクロカレント
マイクロカレント機能がついている家庭用低周波治療器をお持ちの方は患部にマイクロカレントをあてるとその分治りが早まります。
機器によって一日あたりの使用時間がありますので、確認しておきましょう。
⑤セルフマッサージ
マッサージガンや低周波治療器、自分の手で行うマッサージなどで筋肉をなるべく緩めてあげましょう。
その場合は臀筋、太ももをまんべんなくケアしてあげた方がいいです。
なぜなら自分だけでは原因となっている筋肉がどれなのかを把握することは困難ですし、施術者に「一番はこの筋肉だから」と言われてもその筋肉がどこを走行しているのかわからないことがほとんどです。
また、原因が筋肉ひとつだけとは到底限らないからです。
⑥湿布
抗炎症作用の入っている湿布を患部に貼ることでその分治りが早まることに繋がります。
特に寝ている間は他のセルフケアが行えないので、湿布を貼っておくことがベターです。
何よりも予防が大事
ランニング動作の入るスポーツにおいて膝の症状はつきものです。
しかし予防できるものでもありますので、
- 原因を理解する
- ストレッチやセルフマッサージなどセルフケアをきちんと行う
- 定期的に治療院へ通う
を行い、身体、筋肉の状態を良い状態にキープするよう心がけましょう。
セルフケアや治療院への通院は大変さというのも確かにあります。
しかし症状が炎症までいってしまってからの治療のほうがよっぽど大変です。
トレーニングとケアはセットです。
是非そうならないようにトレーニングとケアを頑張っていってください。
著者プロフィール
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自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、
競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス
など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。
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