鍼灸に関するQ&A

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

患者さまより施術中に鍼灸の施術や道具について細かなご質問を受けました。
興味を持って頂けるのはとても良いことですので、これを機にご質問頂いた内容をひとつの記事にまとめさせていただきます。

鍼の太さは違うのか?違いによってその効果は?

メーカーによって多少呼び方や製造している太さが異なりますが、概ね以下のようになります。

  • 02番=0.12mm
  • 01番=0.14mm
  • 1番=0.16mm
  • 2番=0.18mm
  • 3番=0.20mm
  • 4番=0.23mm
  • 5番=0.25mm
  • 8番=0.30mm
  • 10番=0.34mm

⚪︎番というのは鍼灸師が使う呼び名です。
⚪︎mmは鍼の太さ(直径)です。

上:2寸,3番 下:寸3,01番

施術者の考えや患者さまの鍼に対する反応、好みにもよりますが、通常は02、01番が顔用(美容鍼用)、1番以降が身体用と言われています。

絶対的なことはなく、あくまでも目安のような意味合いで、専門学校でそう習う程度のものです。

鍼の長さにも違いがあるのか?

鍼の太さと同様に、鍼の長さにも種類があります。
鍼の長さは通常「尺貫法」を使います。

  • 5分=15mm
  • 1寸=30mm
  • 寸3=40mm
  • 寸6=50mm
  • 2寸=60mm
  • 3寸=90mm

例えば寸3とは1寸3分の略で、「すんさん」と僕らは呼びます。
身体に対して使う鍼は主に寸6で、施術者の好みによっては寸3も使います。
顔用(美容鍼)として5分もあります。

鍼の太さと長さの組み合わせ

上記に挙げた太さと長さの組み合わせを考えて鍼を使います。
僕は01番の寸3と1番の寸6を主に使い、2寸の3番を男性の臀部に使うこともあります。
明確な決まりはありませんが、02、01、1番は細め、2,3は平均的、4番以降は太めと分類されていると個人的には認識しています(施術者によって考えは異なる場合もあり得ます)。

主に細めな鍼を使う理由

①鍼を受けて改善させたいけど鍼が苦手な患者さまのために

苦手な方には細い鍼を使ったほうが刺激としては弱く、鍼を受けやすいです。無理に鍼施術を受けても身体がこわばってしまえば施術の効果は半減しますし、刺激としても余計に強く感じてしまう場合もあります。

②主にアスリートのスケジュールにあわせる為

トレーニングによって硬くなった筋肉に鍼をすると、施術後に刺された痛みを覚えることがあります。それが消えるまで数十分の方もいれば、翌朝までかかる方、部位次第では数日かかる場合もあり、色々です。
施術後にトレーニングの予定が入っている場合や翌日以降のトレーニングがある場合、その痛みでトレーニングの質やメンタルに支障が出ないとも言い切れません。
よって、改善させつつ刺激は最小限というのを目指す場合には01番を使うことが多いです。

臀部に平均的な太さの鍼を使う理由

臀部は厚い筋肉が何層にもなっているので、深い筋肉に刺激を入れたい時は2寸でないと届かない場合もあります。
また、細い鍼ほど身体に入っていくにつれてしなってしまうこともわかっています。
よって、狙っている部位に正確に届かないということもあり得ます。
そのため、筋肉の硬さや狙いたいポイント次第で鍼を使い分けていくことをします。
時にハム(裏もも)の奥に刺激を入れたいのに1番の寸6だとなかなか筋肉が緩まない場合に3番の2寸を使うこともあります。

その他の鍼について

4番以降は個人的にはあまり使わないです。
ただご高齢になると知覚鈍麻が起きて太い鍼でもあんまり感じないこともあります。
それ故、鍼独特の響きが好きな高齢者には5番を使うこともありますので、一応治療院には5番の鍼を用意してあります。

美容鍼の本数はなぜあんなに多いのか?

施術者によって言い分は異なるであろうポイントになりますが、個人的には見た目のインパクトさを出して集客に繋げているパフォーマンス的要素が大きいと思っています。
本来はひとつの筋肉に対して一本鍼を刺せば、そこを起点に血流は良くなるはずなので1筋肉1本と思えばあんなにも刺す必要性が見当たりません。

鍼の本数が増えればその分毛細血管を突き破ってしまい内出血する箇所・可能性も増すので、デメリットもあります。
もっとも内出血のリスクはどのような本数であれ一定数存在するので、そもそも美容鍼をする際は翌日が休みのタイミングがベターと言われていますし、美容鍼を専門としている鍼灸院ではそのように説明を受けるはずです。

鍼を打たれた瞬間の皮膚の痛みはなに?

鍼を打った時の皮膚の痛みの種類は2種類あります。

①痛点

痛点とは皮膚に点在する痛みを感じる受容器です。
目には見えないので、どんなに優れた鍼灸師でも一定の確率で当たってしまい、当たると注射針を刺したような鋭い痛みに襲われます。
その場合は痛みを我慢しても良いことはありませんので、正直に言って頂いた方が良いでしょう。

②物理的に鍼が皮膚を貫通する痛み

皮膚には知覚神経が存在しているので、皮膚を触れば触られた感触があります。
この知覚神経が痛みとしてチクチクしたように感じさせることがあります。
鍼の太さが太いほど痛みが増す傾向にあります。
また、施術者の鍼を打つ技術が低ければ低いほど、その痛みの頻度は多く、度合いは大きいと言われています。
さらに、患者さまの自律神経が乱れがちであったり、筋肉が極度の疲労状態ですとチクチクしやすくなります。

鍼灸の施術を受ける頻度はどれくらいが好ましいのか?

個々人の症状やその度合いによりますが、基本的には症状が戻り切らないうちに次の施術をするのが望ましいです。

何回か通院する必要がある症状なら、施術前の痛みが100として、完治が0としましょう。
最初の施術で50まで減ったとして、日常生活や仕事、運動等で多少ぶり返します。
100に戻ってから施術をしたら100と50を行ったり来たりで一向に良くなりませんので、戻ってもおおよそ80までに次の施術を受けることをオススメします。
3歩進んで2歩下がるを繰り返して徐々に良くなっていくものだと思うようにするのが理想だと個人的には考えています。

ただし、早く良くなりたいという理由があるなら60に戻った段階で即施術を受ければその分改善は早いと言えるかもしれません。

肩こり等の仕事が原因の症状の場合

肩こり等の仕事が原因の症状でいうと、その原因となる事柄を変えない限り定期的な負担があるわけなので、定期的な施術が必要となってきます。
毎日歯磨きをするのと同じように、月に1回など、コリ感を強く感じないうちに施術を受けるよう定期的にスケジューリングすることをオススメします。

ギックリ腰の場合

ギックリ腰は毎日施術を受けた方が良いです。
ギックリ腰を発症するとその瞬間に異常なほど筋肉が硬くなります。
それを解除するのは一度や二度の施術では改善し切らない事も多いです。

また、ギックリ腰をしてしまってもある程度はトイレに行く等の日常生活の為に動かなければなりません。
そうすると痛みを我慢してかばって動くことになり、その結果違うところが硬くなる、という二次被害が起きます。
それも解除させていかなければ治りが悪くなるので、短期間で施術頻度を高くしていく方がベターです。

施術を受けるタイミングはいつが良いのか?

タイミングを考える上で、1番の考慮が必要なことは、「鍼灸の施術を受けて眠くなるかどうか」です。

施術を受けてその後眠くなる方は予約の後に予定を入れてしまうとどうしようもない眠たさに襲われて用事を済ませられないというお話を患者さまから聞いたことがあります。
そういう方は昼寝をしても問題ないような予定のない日の午前中や、眠くなってもあとは夕飯と入浴だけで寝るだけ、という午後から夜にかけての方がベターです。

鍼で眠くなるのはなぜ?

自律神経が整うからです。
細かく解説すると以下のようになります。

  • 呼吸に関連する筋肉を緩める→呼吸しやすくなる→深く呼吸できるようになり、副交感神経に刺激が入り優位になる
  • 自律神経が走行している部位の筋肉を緩める→神経叢(神経の根本)が解放されて活性化される→自律神経が整いやすくなる
  • 鍼によりβエンドルフィンが活性化される→βエンドルフィンの効果としてストレスを抑えてくれる→精神的にリラックスすることで眠くなる

というメカニズムです。

お灸の種類はどんなものがあるのか?

大きく分けて2種類あります。
モグサを小さく固めて身体に置くタイプと、台座の上にモグサがのっかっており、台座の裏面がシールになっているタイプがあります。

右から大きさ基準としての1円玉、実際に身体に置く大きさのお灸、お灸の塊(そこからちぎって丸めて置くやつを作る)、せんねん灸の順。

前者は直接灸と間接灸があり、直接灸は皮膚に直接もぐさを置いて、線香で火をつけます。
もぐさが燃え切るまで置いておくと一瞬のチリっとした熱さを覚えます。
それは熱すぎるので、燃え切る直前に施術者が取ってあげるやり方もあり、患者さまのご要望や状態、施術者の考えにより様々なやり方があります。

間接灸は薄く切ったニンニクや琵琶の葉っぱの上にもぐさを置き、それを皮膚の上に置いて火をつけます。
材料の成分が皮膚から浸透することで、熱との相乗効果を狙って行います。
もぐさの熱さは心地よく温かいと感じる程度です。

後者はせんねん灸といい、熱さは心地よく感じる温かさで、じんわりと長く燃えてくれるのでその分気持ちよさも続いてくれます。
メーカーによりますが燃焼温度が3段階ほど用意されており、冷えの強い症状ほど高い燃焼温度のせんねん灸を使います。
また、裏面がシールになっているので、身体の側面に貼っても落ちないというのがメリットのひとつです。

お灸の効果とは?

お灸の効果としては物理的に熱を体内に加える事で、特に冷えからくる症状に効果的です。
例えば冷え性などの体質改善、下痢の改善、大病をした後の体力回復などが挙げられます。

熱という皮膚刺激を与える事で皮膚が熱を感知し、血流が増すことで筋肉の硬さも改善されます。
『あたたかい』と感じる事で安心し、リラックス効果もあります。

様々な症状を改善する選択肢としてオススメできます

以上が患者さまより受けたご質問です。
それらをなるべくわかりやすいように解説しました。

鍼灸の施術は薬のような副作用がなく、安心して施術を受けられます。
また、患者さまが持っている免疫力や自然治癒力を高めて症状を改善するのをサポートする役割を担っています。
お身体について何かお悩みのことがあれば非常におすすめできる選択肢です。

今既に通院している方はもっと鍼灸について知識を深めてみるのも面白いと思いますし、通院したことのない方はまずは近所の鍼灸院から検索してみましょう。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

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