ランの動作に重要な内転筋の基礎知識、セルフケア、筋力トレーニング

高輪で鍼灸治療院を開いている今野です。

自身が元競泳選手ということもあり、アスリート専門の治療院となっております。

一般的な治療院との違いは、痛みを治すことや硬い部位を緩めるだけではなく、「特定の部位に力が入っていない」ことや「可動域が狭い」あるいは「自覚していない骨格の歪みや筋力不足」などを改善してパフォーマンスアップに繋げることをゴールにしている点です。

今野鍼灸治療院では治療のその先を常にイメージしながら、アスリートの自己実現をサポートしていきます。

当院において、アスリートやスポーツ選手、特にランの動作が入るようなスポーツをされている方、その中でも長距離のランニングになると全員と言って良い程、内転筋が関与する症状に1度は悩まされています。そこで今回は内転筋に関する基礎知識、内転筋を鍛えるべき理由、セルフケア、トレーニング方法を詳しく解説していきます。

内転筋とは

内転筋は正確には、大内転筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、薄筋、小内転筋(著者や本によっては省かれる場合もあります)という複数の筋肉によって構成され、内転筋群とも呼びます。
それぞれの筋肉はそれぞれ複数の動作に関わってきますが、これら全ての内転筋群に共通している動作は股関節を曲げること(股関節の屈曲動作)と、足を閉じること(下肢の内転動作)です。

運動時における内転筋の役割は、ランニングでいうと全てのタイミングで関わってきます。
足が地面に接地する瞬間、足を後ろに蹴り出すとき、足(膝)を前に持ってくるとき、そしてまた接地する瞬間という風に、常に働いてくれています。
しかしながら、内転筋を鍛える筋力トレーニングを意識的に行っていない限りは、内転筋の発達は弱いままなのがほとんどです。
よって、それが様々な症状の原因となってしまいます。

内転筋の弱さを放置した場合のデメリット

内転筋が弱いままトレーニングを続けると、以下のような症状に悩まされることに繋がる可能性が高まります。

  • 膝の痛み
  • 股関節の痛み
  • 腰の痛み
  • 肩の痛み
  • 適切な姿勢をとれないことでパフォーマンスダウン
  • 他の筋肉の負担が増し、硬くなる
  • 他の筋肉が硬くなったことでまた別の症状へと繋がるリスク

前述の通り、意識的に内転筋を鍛えたことがない場合は内転筋は弱いままです。
そのままトレーニングを行うと身体の外側の筋肉に負担が集まりやすくなり、外側の筋肉が発達し、パッと見は「筋肉のしっかりした身体」へと変化していきます。
しかしちゃんと筋肉のバランスを調べてみると、外側の筋肉は強いのに内転筋が弱いというアンバランスな身体というケースが多くみられます。

内転筋と他の筋肉のバランスについてご存知ない方は是非1度パーソナルトレーナーや施術者に聞いて確認しておきましょう。
そしてこれを読んで下さっている方、上記のような症状に悩まされている方は「自分の内転筋は弱い」と思っておいても過剰とはいえないほど、僕が施術してきたほとんどの方の内転筋は弱いです。

内転筋のセルフケア

以下、3つの内転筋のセルフケアについてお伝えします。

ストレッチ

  1. イスやソファーの上に片足をのせます。
  2. 足を開く方向としては、身体に対して真横に開きましょう。
  3. そして上半身を上げている足の方向に倒します。

そうすると足の内側がストレッチされます。
ただし、ストレッチは強すぎたり反動をつけると逆効果です。
身体が暖まっている時に、弱め、長め、反動をつけずに行いましょう。

ストレッチの正しいやり方についても記事を書いていますので、参考にしてください。

ストレッチの間違った認識と正しいストレッチを行う上でのポイント
https://konno-chiryo.com/stretch-point/

内転筋の腱を指圧

多くのアスリートやスポーツ選手にとって、筋肉だけではなく腱にも負担が及んでいる場合が多いです。
よって、ストレッチや低周波治療器、マッサージガンなどで筋肉をセルフケアするだけでは不十分で、腱もセルフケアしておいたほうがベターです。

  1. 写真のように指圧したい側の膝を曲げ(この場合は左膝)、踵をなるべく身体に近づけます。
  2. 反対の足(右足)は軽く伸ばしておいてください。
    (※ただし、反対の足の臀筋に筋肉疲労が起きていると臀部を攣りやすく感じる方もいらっしゃいます。その場合はまずは臀筋のストレッチをしましょう)
  3. 上半身を左側に倒して、両手の親指で内転筋の付け根を上から体重をかけてなるべく優しく押し込みます。

場所は上記ストレッチで伸ばせる筋肉の付け根になります。
よくわからない方は治療院の施術者に聞いてみましょう。

セルフケアを行う上での注意事項

これらセルフケアにおいての注意事項として、以下が挙げられます。

  • ストレッチしていて普通にストレッチされている気持ちよさを飛び越えて異常に痛い
  • 腱を押すと違うところに響いて痛む
  • 画像のような姿勢が取れない

こういった場合はすぐに中止し、治療院へ行ってください。
セルフケアでカバーできる身体の状態ではありません。

内転筋の筋力トレーニング

内転筋を鍛えられるトレーニングは複数種類あります。
どれがご自身に合うのかは今の内転筋の筋肉量、他の筋肉とのバランス、症状の有無、種目によっても異なってきますので、一概には言えません。
よって、ここではご自宅で行える内転筋単体のトレーニングと、内転筋を鍛えるついでに誰でも鍛えておくべき体幹部も鍛えられるトレーニングをご紹介致します。

内転筋単体のトレーニング

画像及び説明は”左”の内転筋を鍛える場合となります。
右の内転筋を鍛える場合には、左右を逆にして実施してください。

  1. 左を向いた横向きで寝て、右膝を曲げて身体の前に出します。
    膝の下にクッションがあった方が良いです。(写真では青いボールで代用しています。)
  2. 左肘をついて、上半身を起こします。
  3. 左膝を伸ばした状態で、天井方向に足を上げます。その時に内ももを意識して上げましょう。

初級:5回
上級:20回
を目指しましょう。
ご自身の体力、筋力、目標に合わせてセット数を増やして負荷を調整してください。

内転筋+体幹のトレーニング

画像及び説明は”右”の内転筋を鍛える場合となります。
左の内転筋を鍛える場合には、左右を逆にして実施してください。

  1. 左を向いて右足と左肘で身体を浮かした状態で支えます。
  2. 右足・右骨盤・右肩が一直線になるくらい腰を上げましょう。
  3. 左膝は直角に曲げて足を浮かせます。
    その時に両膝は揃えた位置にあるのが望ましいです。

初級:20秒ほどキープ
上級:60秒ほどキープ
を目指しましょう。
ご自身の体力、筋力、目標に合わせてセット数を増やして負荷を調整してください。

レベルアップするための近道になり得る内転筋

前述の通り、内転筋は意識的に鍛えていないなら弱いままだと思ってください。
筋骨隆々に見える方でも、内転筋は弱いというケースも多いです。
何かしら症状で悩んでいる方にとって、もし内転筋の弱さが原因なのであれば、そこを鍛えない限りずっと同じような症状に悩まされる可能性があります。
内転筋のケアをすることは勿論のこと、しっかりと鍛えてアスリートとしてのさらなるレベルアップを目指しましょう。
特に今まで内転筋を鍛えてきたことがないのであれば、その分あなたの伸び代は大きいと言えます。

著者プロフィール

今野 弘章
今野 弘章
自身の元競泳選手の経験や、「アスリートは体の痛いところを治せば良いわけではない」という考えから、

競技中(日常生活)の痛みの改善
「この部位に力を入れられない」といった身体の悩みの改善
通常時、痛み時のトレーニング
日頃のメンテナンス

など、より良いパフォーマンスにつなげるための、治療、指導を行っております。

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